巨人パナソニックの焦り、三洋電機・パナ電工の完全子会社化を急いだわけ 


 周囲を見渡せばアジア企業の勢いに圧倒されていた。パナソニックが太陽電池事業に1000億円を投資すると発表した数日後、韓国サムスン電子は太陽電池に5000億円の投資を表明。成長領域で、またも韓国企業の果敢な投資の脅威にさらされつつあった。「従来どおりの3社でコラボを進める速度では、とても勝てない」と痛感した大坪社長が、三洋・電工の社長に完全子会社化の意向を伝えたのは株主総会直後だった。

巨費を投じて事業スピードを加速させる決断をしたが、この代償は小さくない。

4年前までは有利子負債を差し引いても1兆円の手元資金を抱える自慢の健全財務だった。しかし過去2期の巨額赤字が響き、有利子負債が現預金を逆転。今回のTOBで借り入れが増えれば、財務回復はさらに遠のく。対策として最大5000億円もの増資枠を設定したが、これは株主に希薄化という痛みを強いる。今回の発表後、格付け会社はそろってパナソニック債の格下げを検討すると発表した。「戦略的意図は理解できても、目先の財務負担はどうしても重くなる」(スタンダード&プアーズの中井勝之・上席アナリスト)。

が、大胆な意志決定が可能になったのも事実だ。第一段として、12年初をメドに3社の全事業部門をAV・白モノなどの「消費者製品」、電子部品・電池などの「部品」、法人の要求に合わせて自社製品を組み合わせて販売する「ソリューション」の3つの軸に、抜本再編すると表明した。3社融合による組織活性化と、重複事業の統廃合も進めば、経営効率はさらに高まる。

「最も合理的な選択」と大坪社長が言い切るように、パナソニックにとっては必要不可欠な投資だった。競争に勝つために下した決断の是非が、今後検証される。

■パナソニックの業績予想、会社概要はこちら

(西澤佑介 撮影:ヒラオカスタジオ =週刊東洋経済2010年8月14・21日合併特大号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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