値下げもチラつかせた東電"大胆計画"の真贋 再稼働にも値上げにも頼らず再建できるか

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ただ今回、東電首脳の発言からは、原発にも値上げにも頼らない体質への変革を目指す、新たな覚悟も感じ取れる。數土会長は「地域独占、総括原価方式の発想ではなく、自由競争の中でも管理会計を活用して勝ち抜ける、東電の新しい経営DNAを創造していく」と述べた。

自らが鉄鋼大手・JFEホールディングス社長として実践してきたメーカー流の合理化を浸透させ、「原価増大=値上げ」という総括原価方式の発想から脱却することを強調したものだ。

生産性倍増は在庫や残業時間、発電所の定期点検期間など、あらゆる分野が対象。12年11月から資材調達改革で実績を積んだ調達委員会の外部専門家も合流し、その経験を人件費や燃料費など全社的コストの削減へ生かす。

収益確保は至上命題

福島第一原発事故による巨額の賠償負担を抱える東電にとり、その原資となる収益の確保は至上命題だ。一方で、16年度からの電力小売り完全自由化を控え、コスト競争力の強化は必須。料金を値上げしている場合ではない。

原発にも頼れる状況ではない。福島事故の責任究明は道半ばで、汚染水処理のメドすら立たない現状、地元・新潟県知事の合意を得るのは難しい。となれば、合理化をトコトン追求するしか道はない。

新総特では、毎期1500億円前後の経常利益(単体)が目標。東電は13年度に432億円の経常利益を上げ、3期ぶりに黒字転換した。ただ、修繕費などの繰り延べに依存した部分も大きく、その反動増を抑えて大幅増益を達成するのは容易ではない。

社員の士気や設備の安全性を維持しながら、どこまで合理化を断行できるか。數土体制は正念場を迎えている。

 「週刊東洋経済」2014年9月20日号<9月15日発売>掲載の「核心リポート03」を転載)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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