HV、EV、燃料電池車、どれが本命か? 仏自動車部品大手ヴァレオの幹部を直撃

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――ボリュームゾーンの中大型車はどうなるのか。

中間に当たる、C(中型車)、Dセグメント(大型車)は、直噴ターボエンジンと48ボルトのマイルドハイブリッドを組み合わせたシステムが用いられるだろう。48ボルトのハイブリッドシステムは、12ボルトよりコスト高だが、燃費改善効果が高い。しかし、現在のHVやPHVで用いられている、100ボルト以上の高電圧ハイブリッド(ストロングハイブリッド)に比べれば、コストは半分以下で済む。一方で燃費改善効果は、100ボルト級のストロングハイブリッドとほとんど同じだ。ヴァレオのシステムではないが、16年には5社くらいから48ボルトHVが登場し、20年ごろにかけて本格導入が進むとみている。

あらゆるセグメントで、ハイブリッドが本格的に導入される見通しになってきたのには、トヨタ自動車やホンダがHVで成功したことが影響を与えている。1997年のトヨタ「プリウス」導入時には、みなHVには懐疑的だったが、ここまで人気となって、驚きを与えている。両社は技術的にもリードしている。ただ、ストロングハイブリッドは高価だ。日本では、コンパクトカーにもストロングハイブリッドを導入、ヒットしているが、コストを考えると、小型車以下では、他国で受け入れられにくいと感じている。

日系メーカーからも48ボルトシステムへの問い合わせを受けている。ストロングハイブリッドとともに検討しているようだ。また小型車用にはマイクロハイブリッドに対する関心は高い。

 ディーゼルは排出ガス浄化がコスト高に

欧州で人気の高いディーゼルエンジンは、燃費はよいものの、窒素酸化物などの排出ガス規制をクリアしていくのが困難になってくる。フィルターなど排出ガスを浄化するためのコストが跳ね上がるため、中小型クラスに適用するのは難しくなる。欧州でもすでに小型車からディーゼルエンジンが減っている。ディーゼルは大型車が中心になるだろう。

――変速機(トランスミッション)の動向や、燃料電池車(FCV)などについてはどうみているか。

トランスミッションには、CVT(無段変速機)やAT(自動変速機)、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)といった方式があるが、それぞれが効率を改善していくことになるだろう。方式ごとに得手不得手はあるものの、どれを使ってもエンジンと組み合わせたトータルの効率では差が出ないため、収斂されることはないとみている。ただ、ATは多段化を進めていくことで、燃費の改善はしやすい。

FCVは長距離走行や大型車に適用されるだろう。14年度中の一般市販を表明しているトヨタは、明確なロードマップを掲げている。もっとも、EVと同じくインフラの整備には、多くのお金と長い時間がかかる。FCVの普及は長期的なものだろう。

(プロフィール)
ミシェル・フォリシエ(Michel FORISSIER)●1958年生まれ、89年仏エコール・サントラル・ド・リヨン卒。仏ルノーを経て、96年ヴァレオ入社。ヴァレオのパワートレインシステム部門研究開発マーケティングダイレクター兼ハイブリッド・電気自動車戦略担当ダイレクター。

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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