テロ撲滅か機密保持か、SWIFT開示の波紋

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 結局、SWIFTは「システムの再構築」へと乗り出す。欧州と米国に設置していた計2カ所のバックアップセンター(本拠地のシステムと相互にバックアップしてデータを相互に保有)を、欧州2、米国1へと改めた。これに伴い米国のセンターに送信されるデータは、米国企業の関連情報に限定する方針に切り替えた。欧州内に欧州各国間のデータを保存することで、守秘に関する懸念の完全払拭へと働いたのだ。

だが米国にとっては、世界中を行き交う資金の送信情報を十分に把握できなくなる。米国政府は欧州委員会に対し、SWIFTの情報活用をあらためて求めざるをえなかった。

要請を受けて欧州では、米国への協力と、ネットワーク上の情報の機密性という二律背反する問題へと議論が本格化。結局、米国が情報提供を求めた際には、欧州警察機構(ユーロポール)が要請内容をチェックしたうえで可否を判断するなどの条件を設けたものの、協力することで決着した。

今回の一件について、ある金融関係者はこう指摘する。「米国の中央銀行はSWIFTには加盟せず、独自の決済ネットワーク『Fedワイアー』を構築している。欧州とは決済情報ネットワークをめぐる激しい競争が行われてきたが、その軸の一つが情報の機密性だった。テロ対策という命題の下で、ギリギリの協調関係が模索された」。しかし世界中にテロ事件が拡散する情勢下では、今回の決定が永久決着になるとは限らない。

日本では200社を大幅に超える金融機関がSWIFTに加盟している。その背後には、数多くの一般企業が貿易決済などでSWIFTを間接的に利用している、という事情がある。このため「欧州vs.米国」の構図ではありながらも、日本が対岸の火事と等閑視しているだけでよいという話ではない。

テロ撲滅の必要性とともに、自社のビジネス活動の情報が他者に垣間見られる危険性も認識せざるをえないだろう。

(浪川 攻 =週刊東洋経済2010年8月7日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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