ホーム横はすぐ海!「JR鶴見線」で手頃に都会離れ 工場地帯を走る異色のローカル線に乗ってみた
新著『シニア鉄道旅の魅力 二人旅から妄想テツ旅まで』では、シニア世代のテツの第一人者が、奥深い大人の鉄道旅の楽しみ方を伝授しています。
本稿は同書より一部を抜粋・再構成しお届けします。なお、本稿の情報は同書執筆時点のものです。
目の前が海の駅で有名「JR鶴見線」
横浜市鶴見区と川崎市川崎区にまたがって走るJR鶴見線は、特異な路線だ。JR京浜東北線の鶴見駅を起点とし、扇町駅まで走る本線をメインに途中の浅野駅から分岐する海芝浦支線、武蔵白石駅から分岐する(ただし、線路配置の関係で、電車は武蔵白石駅には停車しない)大川支線と複雑なルートを擁する。
もともとは、工場地帯の貨物輸送と従業員の通勤輸送のためにできた路線であり、弁天橋駅以遠に住宅地はほぼなく、工場地帯の中を進む。したがって、朝夕のラッシュ時は混雑するものの、昼間は閑散としているし、土休日はガラガラで電車の本数も激減する。大都会の中のローカル線的な雰囲気もあり、それを好んで訪れる酔狂なファンも少なからずいる。特異な路線と呼ばれるゆえんだ。
起点となる鶴見駅。京浜東北線の電車を降り、エスカレーターを上ってコンコースを進むと鶴見線乗り場専用改札がある。同じJRの路線なのに改札口があるのは、鶴見線のすべての駅が無人駅となっているため、ここできっぷのチェックをしようとしているからだ。1943(昭和18)年までは鶴見臨港鉄道という私鉄路線であり、戦時下において国鉄に買収された経緯があるので、その名残という見方もできる。
鶴見線の鶴見駅は、コの字形のホームで行き止まりとなっている小ぢんまりとしたターミナル駅だ。ドーム状の屋根に覆われた薄暗いホームに立つと、一気に昭和にタイムスリップしたような感覚を味わう。
ラッシュ時を除いて手前の3番線しか電車は発着していない。閑散とした昼間は電車が20分ごとなので、発車直後であれば、かなり待ち時間がある。そんなときは、コの字形のホームをぐるりと回って4番線に行ってみるとよい。ホームの中ほどには、「鶴見線80周年までの足跡」というモノクロ写真付きの年表や、鶴見地区に住んでいて北朝鮮に帰国した人たちから記念に贈られた時計が掲げられている。
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