2022年の日経平均は3万1500円まで上昇の可能性 市場はFRBの引き締めをどこまで許容できるか

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翻って日本の企業業績であるが、こちらは投資家の期待を満たしつつあり、先行きも改善が期待される。足もとの状況について日銀短観(12月調査)を確認すると業況判断DIは大企業製造業がプラス18と前回調査対比横ばい、大企業非製造業がプラス9と前回調査対比7ポイント上昇であった。

大企業製造業は電気機械、生産用機械、汎用機械、化学などコロナ禍で耐性を発揮してきた業種を中心に強さが続いた。半導体関連、FA関連(工場の自動化等)の需要好調が背景にある。半導体不足が足かせになった自動車はマイナス8と弱さが続いたが、生産計画ベースでは供給制約の緩和が確認されており、先行き判断DIはプラス2へと現況対比10ポイントの改善が示された。

回復のバトンは自動車に引き継がれそうだ。次に大企業非製造業は対事業所サービス、情報サービス、通信、不動産などで強さが続いたほか、対個人サービスや宿泊・飲食サービスといったコロナ禍の打撃がきつかった業種に光明が差し込んだ。

業況判断DIの上昇はいったい何を意味するのか

この結果TOPIX(東証株価指数)構成銘柄の属性の近い大企業全産業の業況判断DIはプラス14へと前回調査対比4ポイント改善した。長期的に大企業全産業の業況判断DIがTOPIX予想EPSと同様の軌道を描いてきたことから判断すると、企業業績は一段の拡大が期待される。日銀短観の調査方法は比較時点を問わない形式であるから、企業は直近の業績進捗度合いが自社計画を満たした場合に「よい」と回答する傾向があり、結果的に予想EPSの上昇と一致する。

つまり業況判断DIの上昇は、業績上方修正余地と読み替えることができる。今後、内需の回復が増勢を保ち、サプライチェーン問題も快方に向かえば製造業と非製造業はともに業況改善が見込まれる。そうした中、コロナ影響で設備投資を手控えてきた非製造業が投資を再開すれば、製造業(機械メーカー)の業況回復はさらなる好循環が期待される。

2022年の株式市場は、海外の金融引き締めと国内企業業績の回復が綱引きする展開となるだろう。FRBの金融引き締めが世界的株価下落を引き起こし、日本株が巻き込まれるリスクが高まっていると判断せざるをえないが、日本企業の業績拡大を背景に株価は水準を切り上げると予想される。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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