2022年の日経平均は3万1500円まで上昇の可能性 市場はFRBの引き締めをどこまで許容できるか

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さて、利上げは株価にどういった影響を与えるだろうか。結論を先取りすれば、2022年の3回(FF金利上限値は1.0%)と2023年の3回(同1.75%)程度の利上げ方針はさほど影響を与えないと考えられる。

累計6回の利上げは、実体経済の回復度合いに照らし合わせておおむね妥当な水準であり、投資家にとって想定の範囲内だ。今回の12月FOMCの直前には2023年に4回の利上げ見通しが示されることも意識されていたので、そうした想定対比ではむしろ穏健であったと言える。

とはいえ、FRBの金融引締めが株式市場を台無しにする可能性は否定できない。そのケースとして主に2つを想定しておきたい。1つは2024年の利上げ見通しが上方修正され、中立金利を上回る2.75%以上になること。ここで「中立」とは景気に対して引き締め的でも緩和的でもないという意味である。換言すれば2.5%以上の政策金利見通しを示すことは景気を意図的に減速させるという含意があるから、株式市場の空気は「逆金融相場」にならざるをえない。

バランスシート縮小がなぜ危険なのか

もう1つはバランスシート縮小、つまりFRB保有証券が満期償還を迎えた際の再投資停止である。前回の利上げ局面では初回利上げから2年近くが経過した2017年10月(決定は9月)にバランスシート縮小を開始した経緯があるが、今回はより早いタイミングで着手すべきとの声が散見される。タカ派色を強めているジェームズ・ブラード・セントルイス連銀総裁は「テーパリング終了時にはバランスシートの縮小に着手することができるだろう」として、再投資そのものを実施しない考えを示した。

その点、12月FOMCでは声明文にバランスシート縮小(FED保有証券が満期到来した際の再投資停止)について記載はなく、またパウエル議長の記者会見でも「着手するかどうかについてまだ決断していない。今後のFOMCで議論していく」と一般論にとどめられた。こうした「バランスシート縮小に距離を置く姿勢は、ひとまず株式市場の安心材料となったが、2022年中にバランスシート縮小の具体的計画が発表される可能性は高く、その場合に大きな波乱が懸念される。FRBは株式市場への配慮を怠らないだろうが、上記2点はつねに意識しておきたい。

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