大みそか「終夜運転」鉄道会社で分かれた復活判断 有名寺社のある路線中心、規模は以前より縮小

拡大
縮小

終夜運転の実施を決めた各社に、その理由を聞いてみた。JR東日本は、新型コロナウイルスの新規感染者数が少なく行動制限が緩和されている状況で、需要が見て取れるからということだった。

私鉄はどうか。京王電鉄は、沿線に寺社が多く一定の需要を見込んでいるからとしている。京成電鉄は、「自治体からの(中止)要請もなく、沿線の寺社においても参詣を行える方針ですので、ご利用のお客様の利便性確保のため終夜運転を実施します」とコメントした。京王沿線には深大寺・大國魂神社・高幡不動尊・高尾山薬王院と有名な寺社があり、京成沿線も柴又帝釈天(経栄山題経寺)、成田山新勝寺といったお寺がある。どちらも寺社参詣での利用が多い路線だ。

近鉄も、沿線に伊勢神宮をはじめ、奈良市の春日大社、橿原市の橿原神宮など有名な神社が多い。このため、初詣目的の終夜運転には「潜在的な需要がある」という。そして「終夜運転を行うことで初詣の際の選択肢を増やし、乗客の分散を図る」との狙いがあるという。要するに「密」を避けるためにあえて終夜運転を行うということだろう。

ちょっと寂しい終夜運転だが…

以前と比べて大きく終夜運転を縮小した東京メトロは、新型コロナウイルスをめぐる状況は改善傾向にあるものの、需要が見込めない路線が多く一部に限ったとした。他社線の運行状況やイベント、初詣の参拝客などを考えて、上野―浅草間としたとのことだ。浅草寺などへの初詣客の利用が見込まれる区間ということだろう。

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大まかに言って、終夜運転を実施するかしないかの判断は、沿線に初詣の対象となる大きな寺社があるかどうかによるところが大きい。ただ、有名な寺社があるからといって必ずしも実施するわけではなく、その点は各社が難しい判断を迫られたであろうことがうかがえる。

今回の年越しは終夜運転が復活するとはいえ、コロナ禍前を振り返ると路線や本数がだいぶ縮小しており、ちょっと寂しい感じはする。だが、東京メトロの発表に「今後の新型コロナウイルスの状況等により終夜運転及び終電繰下げを中止する場合がございます」という断り書きがあるように、コロナ禍はまだ終わっていない。終夜運転をめぐる動向は、心ゆくまで初詣や初日の出鑑賞を楽しめる状況にはまだなっていないことを示しているといえるだろう。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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