中国の急成長を陰で支えた「2階建て列車」の功績 高速鉄道の開業前、輸送力アップの切り札に
1990年代以降の中国の経済発展を支えた2階建て車両の変遷について、ざっと紹介してみたい。
中国の客車で多数を占めるのは「25系」と呼ばれる車種だ。車体全長が25.5mのこの客車シリーズは同一形式の中に見た目や性能が違う多様なバリエーションがあり、これらは「25B」「25K」など末尾に英字を付けることで区別している。2階建て客車は、「2階建て」の意味を持つ「双層(Shuang Ceng)」の頭文字「S」が頭に付き、たとえば25K形の2階建て軟座(上級席)車だと「SRZ25K」(RZは軟座を示す)となる。
2階建て車両の量産開始は1992年。初期の型式は短・中距離用の座席車のみで、軟座(上級席)車は「SRZ25B」、硬座(一般席)車は「SYZ25B」という型式だった。1987年に試作車両として南京の浦鎮車両工場で少量生産された2階建て車両をベースとしており、各車両に空調を付けたため電力供給用の電源車を連結。最高時速は当初120kmだったが、その後、電子式WSP(車輪滑走防止)の導入で140kmにアップした。
初期の2階建て車はいまいちだった?
オレンジ色を基調とした2階建て25B型座席車は、江蘇省や浙江省を含む上海周辺の短・中距離列車、および広州―深圳間に投入された。当時の運用では単層(平屋)の車両と2階建て車両がランダムに走っていたが、前者はリクライニングシート付きであったものの、2階建て車両はシートが固定なうえに空調の利きがいまいち悪いという欠点があり、「できれば避けたい」と意識していたことを思い出す。
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