同じ「花屋」でもコロナ禍に明暗が分かれた理由 決算書比較「ビューティ花壇VS花キューピット」

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ところで、ビューティ花壇における2020年6月期決算での営業損益は、1億5800万円の赤字です。売り上げに占める個人向けギフトの割合が大きいと推測される花キューピットに比べ、冠婚葬祭向けの売り上げ割合が大きいビューティ花壇は、コロナ禍の影響をより強く受けたのではないでしょうか。

コロナ禍にあって、多くの冠婚葬祭が中止されたためです。ビューティ花壇の決算期が後ろに3カ月ずれていることも、決算に対するコロナ禍の影響が大きくなった要因の1つだといえるでしょう。

有価証券報告書に記載されているセグメント別の利益の状況を見ても、 2020年6月期には稼ぎ頭である「生花祭壇事業」の利益額が大きく低下しており、ブライダル市場の縮小と競争の激化で苦戦している「ブライダル装花事業」の赤字幅も拡大しています。

その一方で、「生花卸売事業」の利益額は2019年6月期と同様の水準を確保しています。やはり、ビューティ花壇の赤字の原因は冠婚葬祭の自粛にあるといえそうです。

「花の売り先」が明暗を分けた

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ここでは、生花流通業について取り上げましたが、注文の仲介を主に行う花キューピットと、生花卸売と祭壇制作・販売を中心としたビューティ花壇の間には、B/Sにおける資産の持ち方に大きな違いがありました。

また、コロナ禍にあっては、冠婚葬祭向けの売り上げ割合が大きいビューティ花壇の業績は厳しいものになっています。比較的影響を受けにくい個人向けの需要を取り込みながら、いまは我慢を続けるときといえるのかもしれません。

最後に、2社のビジネスモデルの特徴をキーワードでまとめておきましょう(図4)。

図4:(出所)『見るだけで「儲かるビジネスモデル」までわかる 決算書の比較図鑑』
矢部 謙介 中京大学国際学部・同大学大学院経営学研究科教授

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やべ けんすけ / Kensuke Yabe

専門は経営分析・経営財務。1972年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒、同大学大学院経営管理研究科でMBAを、一橋大学大学院商学研究科で博士(商学)を取得。三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)および外資系経営コンサルティングファームのローランド・ベルガーにおいて、大手企業や中小企業を対象に、経営戦略構築、リストラクチャリング、事業部業績評価システムの導入や新規事業の立ち上げ支援といった経営コンサルティング活動に従事する。その後、現職の傍らマックスバリュ東海株式会社社外取締役や中央大学大学院戦略経営研究科兼任講師なども務める。

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