携帯3社が乗り出す「スマホメタバース」の正体 未来の「モバイルSNS」主戦場となる可能性も

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日本発のバーチャルSNSであるcluster(クラスター)は2017年に正式公開されてから、1000人が同時に視聴できる有料ライブ機能を持ち、VTuberブームを支えるプラットフォームとして浸透していった。2018年、2020年にKDDIをはじめとした企業が出資(KDDIの出資額は未公開)し、現在はバーチャル上で東京の街を体験できるバーチャル渋谷、バーチャル原宿、バーチャル丸の内といったデジタルツインを再現できるプラットフォームとしても認知されていった。

専用アプリを使うことで、スマートフォンからも利用できる。すでに多くのバーチャルな3次元空間が作られており、会話に向いたカフェを模したワールドもあれば、ミニゲームで遊べるワールドも用意されている。

アクティブユーザー数は公開されていないが、日本人のユーザーが多い。また公式ワールドでつねに多くのユーザーが集っている「Cluster Lobby」ではユーザーが作ったワールドを紹介しており、クリエーターを大事にしている様子が伺える。

渋谷区公認のバーチャル渋谷もclusterで作られている(筆者撮影)

KDDIは東急、みずほリサーチ&テクノロジーズ、渋谷未来デザインと一緒に業界団体「バーチャルシティコンソーシアム」を発足。都市連動型メタバースとして、バーチャル空間をリアルな空間と連動させる際にステークホルダーや法規制・権利などの整理を行い、リアル空間で商売を営む企業や団体がバーチャル空間で営業しやすいように働きかけていくという。ユーザーコミュニティーと企業との橋渡しが進む好例となることが期待できる。

ソフトバンクはファッションメタバースに出資

近年のゲームは自由にアバターのデザインを作り込める機能が備わっているものが多い。11月30日、ソフトバンクグループのVision Fund 2はゲーム世界のアバター要素を取り入れた韓国発のファッションメタバースプラットフォームZepeto(ゼペット)に170億円規模を出資した。

ZepetoはTikTokのアバター版といったサービスだ。自分の顔写真を元に自動生成される(もしくは自由に作り込める)アバターに好きな衣類を着せて記念写真やダンス動画を撮り、コンテンツとしてシェアできる。ARカメラを用いてリアル空間とアバターを合わせたコンテンツも作れる。またclusterのように、クリエーターが作った「マップ」に入ってほかのユーザーのアバターとテキストチャットやボイスチャットで会話できる。

ディズニーやGUCCIなどのブランドがバーチャルファッションを提供。メイクやネイルなども含めれば100万種類以上のアイテムを用いて、好きなコーディネートが手軽に楽しめる。

ユーザーのアバターが集って写真や動画が撮れるZepeto(筆者撮影)

フォートナイトをはじめとしたゲーム的な要素を持ち、clusterのようなユーザーコミュニティーも尊重している雰囲気があるZepeto。デジタルアイテムの販売など、メタバースビジネスを学ぶのにぴったりなプラットフォームだ。

世の中にはほかにもさまざまなメタバースが存在する。それぞれ独自の特徴や魅力を持っているが、この3つの例はスマートフォン時代のメタバースとしてこれからも注目されるものと思われる。もしあなたの会社にメタバース絡みの企画の売り込みがあったとき、営業マンに普段からどのメタバースを利用しているかを聞いてみよう。そのときにVket Cloud、cluster、Zepetoの名前が上がらなかったとしたら、その企画は未来を先取りしすぎているかブームにのっただけのものかもしれないと判断できる。

武者 良太 フリーライター

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むしゃ りょうた / Ryota Musha

1971年生まれのガジェットライター。90年代に出版社勤務の後、フリーライター/カメラマンとして独立。スマートフォン、モビリティ、AI、ITビジネスからフードテックなど、ハードウェアレビューから、ガジェット・テクノロジー市場を構成する周辺領域の取材・記事作成を担当する。元Kotaku Japan編集長。

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