求心力低下?岸田首相も絡む「安倍」包囲網の成否 「最強のキングメーカー」狙いに渦巻く警戒心

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現在は無派閥だが、清和会出身だけに、一部では6日の安倍派パーティーでの高市氏再入会のうわさも広がった。しかし、安倍派内の反高市感情は強く、高市氏自身も前日の5日の民放番組で「安倍派になったら帰れるかなと思っていたが、特にお誘いもなく今に至る。しばらくひとりぼっちかもしれない」と自嘲気味に語っていた。

パーティーでの来賓あいさつでも「無派閥の高市です」と前置きしたうえで、対中強硬姿勢の安倍氏を高く評価して見せたが、安倍派議員席の拍手はまばら。犬猿の仲とされる同派所属の稲田朋美元政調会長は高市氏に背を向ける形で議員席を離れる一幕もあった。

手綱さばきを誤るわけにはいかない岸田氏

そもそも、安倍氏の派閥復帰と会長就任には、派内でも不満が少なくなかったのが実態。「細田さんを議長にして、すぐに自分は派閥の会長に就任というのはあまりにも虫が良すぎる」(派内の閣僚経験者)という声が相次いだからだ。だからこそ、安倍氏が寵愛する高市氏の再入会を推し進めようとしたことが、同派内の反安倍勢力の台頭につながったとみられる。

岸田首相は、こうした最大派閥の足並みの乱れにつけ込もうとしているようにもみえる。周辺は「一強を誇示し続けた安倍・菅政権の手法から、岸田流の『全員野球』に変えることが党内外の政権支持に結びついている」と胸を張る。

確かに、最新の世論調査で内閣支持率の上昇が目立ち、それが安倍氏に忖度しない岸田首相の強い自信につながっているのは否定できない。ただ、安倍氏は自民党の岩盤支持層を掌握しており、「岸田首相が少しでも手綱さばきを誤れば、最大派閥を一気に敵に回す」(自民長老)とのリスクは避けられそうもない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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