小栗旬が38歳で「大役」背負う存在に躍進できた訳 王道を歩くが、最初から売れていたわけではない

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奇しくも「鎌倉殿の13人」で脚本を手がける三谷幸喜さんは小栗さんを「役をつかむのが上手で芝居に嘘のない方」と評しました。「言動も演技も正直で嘘がない」という信頼感が大役のオファーが届く理由の1つなのでしょう。

あえて「覚悟」を口にする効果

そしてもう1つ注目すべきコメントが、制作発表会見でありました。「信じられるリーダーとは?」と聞かれた小栗さんは、「信じる力が強い人。信じたら突き進む強さと、自分1人では何もできないから、それを支えてくれる人を信じ抜く人が信じられるリーダーなのかなと思いました」と語ったのです。

小栗さんは若手のころから、共演者はもちろんスタッフの名前を覚えて呼ぶことを徹底。また、多忙な中、吉田鋼太郎さん主演の深夜ドラマ「東京センチメンタル」(テレビ東京系)、福田雄一監督のヤンキーコメディ「今日から俺は!!」(日本テレビ系)、三池崇史監督の女児向け特撮ドラマ「ひみつ×戦士 ファントミラージュ!」(テレビ東京系)に出演協力するなど、周囲の人々との関係性を大切にする人柄で知られています。

やはり小栗さんが大役を背負えるのは、視聴者だけではなく、スタッフや共演者からスキルと人柄を認められていることが大きいのでしょう。これはビジネスパーソンも同じで、取引先と同僚の両方から認められていなければ、大役を任され続けることは難しいものです。

小栗さんは「鎌倉殿の13人」で主演を務めることについて、「1年半にもわたり、1つのテーマ、1本のドラマに出演するという大河ドラマの経験は、生涯一度は体験したい……体験しなければならない……僕にとって俳優としての大きな関門であり、夢であり、挑戦であり、恐れさえ覚える覚悟のいる仕事です」とコメントしました。

「日本沈没」のときと同じように、ここでも“覚悟”というフレーズを語っていたのです。自分の中で覚悟を決めるだけでなく、“覚悟”というフレーズをあえて口に出すことでプレッシャーをかけているのではないでしょうか。それは自分の力を引き出すための行為であると同時に、「大役を背負える存在であること」を周囲の人々に知らしめているようにも見えるのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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