「呪術廻戦」に描かれた"呪い"のルーツを紐解く のろい?まじない?呪いとSNSに共通する特徴
そもそも平安時代のはじまり、つまり794年の平安京への遷都は呪いが原因でした。784年、桓武天皇(かんむてんのう)は周囲の反対を押し切り、平城京から長岡京へ遷都をしました。ところが遷都推進者だった藤原種継(たねつぐ)が何者かに暗殺される事件が発生しました。その容疑者のひとりとして捕らえられたのが、桓武天皇の弟・早良親王(さわらしんのう)です。早良親王は無実を訴えて断食し、憤死してしまいました。
すると長岡京では、疫病や洪水などの災害が頻発、桓武天皇の生母や妃が病死するなどの凶事が相次ぎました。桓武天皇が陰陽師に原因を探らせたところ、早良親王の呪い(祟り)によるものだと判明。長岡京は呪いの都としてわずか10年で廃されました。そして、呪術による結界を張り巡らせた平安京へ再遷都されたのです。
こうして平安京を舞台に呪術は全盛期を迎えますが、ひと口に「呪術」といってもその系統はいくつかあります。縄文時代から培われた神道系呪術、大陸からもたらされた道教系呪術、日本で独自進化を遂げた陰陽道系呪術、山岳信仰から生まれた日本オリジナルの修験道系呪術、空海や最澄によって本格的にもたらされた密教系呪術です。
『呪術廻船』に登場する呪術の描写も、これら5系統の伝統的な呪術に基づいているのです。例えば、『呪術廻戦』における人気キャラクター・伏黒恵の呪術は陰陽道系呪術と神道系呪術をベースにしています。
呪術御三家のひとつ・禪院家のルーツ
伏黒の術式・十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)は、10種の式神(しきがみ)を使役する呪術です。式神の「式」とは「もちいる」の意味です。
式神は、目に見えない神霊や、紙や木片などの無生物を陰陽師の呪力によって動物などの姿に変えたもので、術者の意思によって操られます。平安時代の陰陽師・安倍晴明のエピソードには、伏黒の十種影法術における式神のモデルと思われるものが登場します。
『呪術廻戦』第7話に登場した十種影法術の式神・鵺(ぬえ)は骸骨の面をつけた怪鳥ですが、『宇治拾遺物語』には次のような話が伝わります。藤原道長の依頼を受けた晴明が、呪いをかけられた呪物を発見しました。すると晴明は、懐から紙を取り出して引き結んで呪文をかけました。紙は白鷺へと姿を変えて呪詛をかけた呪術師の家へ降り立ったといいます。
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