コトラー教授の提案する「よい仕事」とは? 『グッドワークス!』企業が善行をして、業績を上げる
インフルエンザ対策で世間での評判を高める
クロロックス社は米国カリフォルニア州に本社を置く家庭用や業務用の洗剤、トイレタリー用品、医薬品、食品を製造しているグローバル企業である。クロロックス社は全米で毎年2万人以上の5歳未満の子どもたちが重病化し入院するインフルエンザの対策に自社リソースを活用することで、世間での評判を高めることを目指している。
もっとも、クロロックス社のターゲットはインフルエンザで入院する2万人の子どもたちだけではない。入院するほど重病化しないまでも、インフルエンザに罹患する子どもたちは多勢いる。さらに、インフルエンザ予防をすることで罹患を免れた子どもたちも、翌年はインフルエンザ患者予備軍である。つまり、同社にとっての潜在的ターゲットは、前述の2万人に加えて、5歳未満でも軽度のインフルエンザ患者、来年のインフルエンザ患者予備軍、そしてそれらの子どもたちの親である。
したがって、最終的なターゲットは2万人の何倍もの人数に膨れ上がる。自社リソースだけではこの社会的取り組みがまかないきれないため、同社は、公共セクターの疾病対策予防センター(CDC)と協同してインフルエンザ対策のキャンペーン、「インフルエンザにさようなら」を立ち上げたのだ。
リモコンや電気スイッチ、電話の受話器の殺菌を!
CDCはインフルエンザの予防方法のひとつに、家庭内の病原菌の温床であるテレビのリモコンや電気のスイッチ、電話の受話器といった家電製品の殺菌を推奨している。殺菌作用のある製品、まさにクロロックス社の出番である。クロロックス社は、このキャンペーンで、インフルエンザワクチンの予防接種を家族で受けることを呼びかけると同時に、インフルエンザウイルスの温床となるテレビのリモコンや電気のスイッチなどを洗いましょう、と間接的に自社の殺菌消毒製品を宣伝する。同社によると、2006年から2010年に実施した同キャンペーンで3万8613人の人々がインフルエンザワクチンを接種し、同社の知名度は向上したと発表している。
クロロックス社の社会的取り組みは、同社が持つ多種のブランド別にも展開されている。米季刊誌『ザ・コーポレート・シチズン』(ボストン・カレッジ企業市民センター『ザ・コーポレート・シチズン』 2014年夏号) では、同社がブランドごとのターゲット顧客層が関心を持つコーズ(社会的な貢献を目的とする主義主張)を分析し、それに見合う社会的取り組みを実践していると紹介している。たとえば、同社のブランドのひとつに、バーツビーズ・ナチュラル・パーソナルケア・プロダクツ(Burt's Bees、以下バーツビーズ)という、自然やオーガニックを意識した環境意識の高い消費者に好まれているブランドがある。
廃棄ゼロ、環境に優しい「グレーター・グッド」
バーツビーズは環境に優しい製品を提供することを「グレーター・グッド」というビジネス・モデルで展開している。「グレーター・グッド」は原材料の調達から廃棄までを責任を持って事業を行うことである。バーツビーズの製造工程はカーボン・ニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量のバランスを取ること)で、使用する72万ガロン(272万5200リットル)超の水を再利用している。
さらに、ゴミ廃棄場への廃棄はゼロだ。これらの取り組みを従業員がしっかりと管理している。バーツビーズで働く従業員は、自らの職場環境を毎日少しずつきれいに、そして環境に優しくしていこうという意識を持っている。従業員は製造現場に設置されているリサイクル用と生ごみ用の400以上あるゴミ箱を定期的にチェックし、廃棄物がきちんと処理されていることを確認しているのだ。
バーツビーズは、また、生ごみなどリサイクルに回せない廃棄物を燃料や再生エネルギーの原料に転換している。さらに、「グレーター・グッド」のノウハウや経験を製造拠点のある地元コミュニティに提供するべく、ノースカロライナ州の非営利機関NCグリーンパワーと再生エネルギー会社のリニューアブル・チョイス・エナジーと提携関係を結んでいる。
『グッドワークス!』によると、企業がよいことを行って、よい業績を上げるための社会的取り組みには以下の6つの方法があるそうだ。
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