数字にだまされる人と裏の本質を見抜く人の大差 「ロジカルなつもり」で非論理的という残念な思考
「ロジカルなつもり」で思考が止まる共通点に、私たちの「数字を鵜呑みにする」性質があります。この「数字=事実」という思い込みが、時に私たちを現実から遠ざけることはぜひ知っておいてほしいポイントです。
例を1つ出しましょう。「Aを食べると、病気になるリスクが2倍になる」という情報を目にしたとします。あなたはAに多大なリスクを覚え、Aを避けようと気をつけるかもしれません。しかし、Aを食べないことによるリスクが0.0005%だったら? Aを食べることのリスクは単に0.001%にすぎません。数字のわかりやすさゆえに、人はそれを拡大評価してしまうのです。
「グラフ」にされると、人はよりその情報を信じやすくなる特徴があります。視覚情報ほどわかりやすいものはありません。しかし、ここで気をつけて見てほしいのが「グラフの軸」。少し極端な例ですが、縦軸の数値や単位を操作することで、私は自分の年齢をいくらでもごまかすことができます(現実ではもっと巧妙な操作が見られます)。
思考の材料として数字があると安心してしまうかもしれませんが、本当に重要なことがいつでも数値化できるとは限りません。
アルバート・アインシュタインの言葉どおり、「大切なものすべてが数えられるわけではなく、数えられるものすべてが大切なわけではない」のです。
数字に頼りすぎるのも考えもの
救急医療の質を上げるため、「救急外来は4時間以内に診察しなければならない」という決まりがイギリスで導入されたことがあります。しかし、このルール施行と同時に、全国で数字をごまかす病院が続出。待ち時間は病院に入った瞬間からのカウントなので、患者を救急車に乗せたままにしておけば長時間待たせることができます。
数字だけ見れば救急医療の質は向上したことになりますが、現実はその正反対でした。
数字を基準にしすぎると、「数字で帳尻を合わせればよし」とされやすくなります。職場で数値目標を課せられると、数字をごまかそうとする人が出るでしょう。数字だけを上げようと、ほかのすべての要素を無視する人も出るかもしれません。
「数字が目標になると、その数字はあてにならなくなる」という経済学者チャールズ・グッドハートの言葉は、数字があふれる今、現実を正しく見つめるうえで重要な指針といえます。
数字は石けんのような存在で、あまりに強く握ると手をすり抜けて落ちてしまうのです。
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