中国共産党ひっくり返す「動乱」なぜ起きないのか

覇権的な中国に「日本はどう考え対処すべきか」

中国のど真ん中で、香港のような動乱はなぜ起きないのだろうか? (写真:Sean Pavone/iStock)
ウイグルをはじめとする苛烈な「民族弾圧」から香港、台湾へと広がる世界的危機。中国共産党・習近平はいったい何を目指しているのか。その中国リスクを読み解く『中国共産党帝国とウイグル』の著者・橋爪大三郎氏と、社会学者の大澤真幸氏が、中国の文明・哲学的背景を踏まえ、覇権的な習近平体制の本質に切り込み、この状況に日本はどう考え、対処すべかを語り合う。(前回は習近平体制の本質と「特色的」な政治的資本主義に切り込んだ『意外と知らない中国式の「国家資本主義」その本質』)。

中国のど真ん中で動乱が起きる可能性は?

大澤:いま中国は、香港や新疆ウイグルで、とてつもない「弾圧」をやっていると報じられています。それを西側諸国がどれほど批判しても、中国当局は「内政干渉だ」と言って歯牙にもかけない。ただし、中国のど真ん中で、香港のような動乱が次々と起きれば、昔の東ヨーロッパのように、民主化したり、人権が尊重される社会に変わっていくための手がかりになるような気もするんです。

もちろん、強圧的に権力が働いているので、簡単にはいかないと思いますが、人々の不満がたまっていくと、自由を求めていずれ大きな転換が起こりそうだと考えますが、この辺の見通しについてはどうでしょうか。

橋爪:その問いに答えるには、毛沢東という存在を改めて考えてみる必要があると思う。中国共産党の権威を軸にして、人びとを動員する近代化のあり方を、限界まで推し進めたという意味で、やっぱり毛沢東があってこその現代中国だという気がする。

毛沢東の果たした役割は、アメリカで言えば大覚醒(18世紀中ごろからアメリカ植民地で始まった信仰復興運動)に匹敵する現象だと思います。気がついたら信仰のウエーブに巻き込まれて、自分も熱烈な信仰心に目覚めていたという経験ですね。

毛沢東の権威は、革命的ロマン主義として人びとに働きかける。革命によってつくり変えられた世界は、もっと正しくて、もっと価値があって、自分の人生を光り輝かせてくれる。そういうメッセージが毛沢東から自分に届いているんだと確信できる。それが信仰心のように人びとに広がっていく。

さて、今の共産党は、無謬なのかどうか。毛沢東の時代は無謬ではなかった。毛沢東という革命の権威があれば、共産党の組織や幹部を攻撃できた。習近平は毛沢東なのか、劉少奇なのか。どっちかわからないでしょう。

だから、中国の中心で反共産党の運動が起きるとすれば、私こそ最も共産党的です、私こそ最も熱情的に中国革命を、あるいは中国の伝統を、現在に生かす理想の推進者です、と言うカリスマが出てきたとき。その場合には、中国共産党は相対化されるのだと思います。

大澤:今の体制では、そういう扇動者は出にくいでしょうね。

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