HIS、わずか1年で2度目の「コロナ増資」に走る事情 背景には5年以内の神谷町本社買い戻し計画も

印刷
A
A

まずは業況の厳しさだ。

主力の海外旅行は現在、コロナ前の2019年度に毎月250億~470億円を記録していた取扱高が毎月数億円レベルの異常事態が続く。10月30日に発表した2021年10月期の通期業績予想も売上高1250億円、最終赤字530億円と厳しいものだった。

渡航制限の緩和が進まず、海外旅行の低迷が長期化すれば、財務を毀損するリスクは高まる。また、アフターコロナに向けた投資資金も確保しなくてはならない。早期に資本増強策を打つ必要があった。

調達の難航をうかがわせる記載も

さまざまな手を探る中、ファンドから提案があったのは9月の本社売却の直前だったという。ファンドが提案したのは第三者割当増資、新株予約権とも3回に分割して割り当てる手法だ。

資料には「3回に分割された資金調達方法ではあるものの、1回で本件と同規模を引き受けられる割当先も現状見つかっていないことも踏まえると、当社が選びうる現実的な選択肢~」とある。澤田会長への割り当てもファンドが要請したもので、「コミットを求める」ということだろう。どうやら引き受け先探しは難航していたようだ。

もう1つ、財務制限条項の存在もあった。

HISはシンジケートローン345億円について「①期末の純資産を前期の75%以上に保つ」「②2期連続の経常赤字を避ける」との条項を課されている。2期連続の経常赤字となり条項に抵触したとみられるが、銀行と交渉を重ねている最中だという。

もちろん、返済を猶予されたとしても財務の健全化に向けた努力は求められる。HISとしても、今回の増強策は①について「自助努力を示すものと判断しております」と説明している。

次ページ明らかになった「本社奪還計画」
ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日野自動車「データ改ざん」による重すぎる代償
日野自動車「データ改ざん」による重すぎる代償
工場が消える!脱炭素が迫る最後の選択
工場が消える!脱炭素が迫る最後の選択
ファミマと伊藤忠が狙う「セブン-イレブン1強体制」打破の勝算
ファミマと伊藤忠が狙う「セブン-イレブン1強体制」打破の勝算
マンションで急増「宅配ロッカー」が突く新課題
マンションで急増「宅配ロッカー」が突く新課題
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
  • 新刊
  • ランキング
東洋経済education×ICT