JR九州「長崎新幹線」で変貌迫られる観光列車戦略 或る列車は博多―由布院間に転出、料理も変更
長崎・佐賀エリアに新たに投入するのは特急「ふたつ星4047」。2022年秋頃から土日祝日を中心に、在来線の武雄温泉―長崎間を運行すると10月27日に発表した。
ほかの多くの観光列車と同様、新車ではなく既存車両の改造となる。ベースとなるキハ40形とキハ47形をどこから調達するかはまだ決まっていない。「2020年から在来線新型車両YC1系が長崎エリアに投入され、それまで同エリアを走っていた車両が余剰となり、九州全域に転出した。全体の車両運用の状況を見ながら観光列車にするキハ40形とキハ47形を捻出する」とJR九州の担当者は説明する。
ふたつ星4047で長崎から大村線経由で武雄温泉に向かう場合の料金は4500円。通常の乗車券運賃、指定席特急券料金と同額である。その意味では、或る列車のような旅行商品タイプではなく、「指宿のたまて箱」「海幸山幸」といったJR九州のほかの観光列車と同じ価格体系といえる。
「或る列車」で由布院観光盛り上げ
或る列車のリニューアルに影響を与えたもう1つの要因があった。2020年10月に新たな観光列車「36ぷらす3」が運行開始したことだ。九州7県を5日間かけてぐるりと回る。1日単位で区間を区切った乗車も可能。長崎―佐賀間も走るため、西九州新幹線と組み合わせて楽しむこともできる。
ふたつ星4047と36ぷらす3。この2つの観光列車が長崎、佐賀エリアをカバーすることになり、或る列車に頼る必要がなくなった。
一方で、由布院は36ぷらす3の運行ルートから外れた。事情が許せば乗り入れてもいい場所だが、36ぷらす3は電車であり非電化区間の由布院に乗り入れることができないのだ。
由布院はその名を冠した特急「ゆふいんの森」が博多―由布院間を1日3往復するほか、特急「ゆふ」も走っている。さらにななつ星も立ち寄るなど、「JR九州にとって非常に重要な観光拠点」(同社)である。全国の観光地と同じく由布院もコロナ禍で大きな打撃を受けたが、それだけではない。2020年7月には豪雨被害で付近の区間が不通になり、今年3月にようやく全線再開した。
そのため、「由布院をさらなる観光列車で盛り上げたい」という声が社内で上がった。そこで白羽の矢が立ったのが、或る列車である。ディーゼル車であり、かつては日田―大分間を営業運転して由布院に乗り入れていた実績もある。
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