私が「サイボーグになっても」叶えたい3つの願い 「ネオ・ヒューマン」著者独占インタビュー:後編
「障害」に関しては、私がぶち壊したいと思っている世間一般の先入観について、すでに詳しく述べました。なので、ここでは残りの2つに焦点を当ててお話ししたいと思います。
私がこれからつくっていきたい「2つの未来」
1984年に、ロボット工学をテーマにした初の書籍を出版して以来、私はAIを人間のライバルではなくパートナーにすることを提唱してきました。AIとは、すぐれた才能を持つジャズピアニストのようなものです。しかし、一緒に演奏してくれる人がいなければ、才能の持ち腐れになってしまいます。
もちろん、AIはソロでもすばらしい演奏をすることができますし、聴衆を驚かせることもできます。しかし、明らかに異なるスキルを持った、別の才能ある演奏家とのシームレスなアンサンブルが実現すれば、そのパフォーマンスは魔法にも等しいものになるでしょう。
人類にとって最も魅力的な未来とは、人とAIが協働する未来だと私は信じています。ヒューマンセントリックなAIが活躍する未来、と言ってもいいでしょう。
その未来では、AIも人も、単独でパフォーマンスをすることはありません。両者はライバルではなく、お互いを頼りとするパートナーです。そこにあるのはゼロサムの潰し合いではなく、シナジーです。それこそジャズのコンボのように。
しかし、私が目指すヒューマンセントリックなAIとは、さらにその上を行くものです。
私がいま力を注いでいるのは、世界中のあらゆる場所、あらゆる産業に散らばるAIが、人間中心の態度を獲得するように働きかけることです。そのカギとなるのは、AIが持つべき責任、個性、倫理、そして権利に関する議論です。
私がこのような活動を行っているのは、その先に大きなメリットがあると考えているからだけではありません。そうしなければ、未熟なAIの「無秩序な台頭」に対して、社会から深刻な反発が起こると危惧しているからです。
私にとって、ヒューマンセントリックなAIを育てること(AI倫理やサイボーグの権利といった重大な問題を解決することも含めて)は、人類が進むべき最も魅力的なコースというだけではありません。それは、人類が行き止まりに突き当たらずに済む、唯一のコースかもしれないのです。
これまでの人生で私が選択してきたことが、すべての人に理解されるとは思っていません。とはいえ、愛というものを経験したことがある人にとっては、「なぜ」私がそのような選択をしたのかは明白でしょう。
フランシスと私が一心同体になってから50年になります。私たちは成人してからの人生を、丸ごと共に過ごしてきました。そしてその間、世界を相手に戦いつづけてきました。
私たちは常にお互いを気遣い、あらゆる敵を相手に背中合わせで戦ってきました。いまの私に、彼のそばにいつづけるために全力を尽くす以上に大切なことが、ほかにあるとは思えません。
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