私が「サイボーグになっても」叶えたい3つの願い 「ネオ・ヒューマン」著者独占インタビュー:後編

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出会ったその日から、私はフランシスのためになら喜んで死ぬことができたでしょう。そしていまは、どんな犠牲を払ってでも、彼のために生きたいと思っています。

これは、ごく平凡なラブストーリーに過ぎません。ただし、ふたりがゲイで、私が科学者だということを除けば。現実世界のゲイのラブストーリーというものは、そう多く語られているわけではありません。存命のゲイの科学者についても同様です。

愛し合うカップルにとって大切なことは、人種や宗教ではなく、まして性別でもありません。フランシスと私がありのままの自分たちでありつづけることで、その真理を世の中に伝える手助けができるのであれば、これほど誇らしいことはありません。

大切なのは愛。ただそれだけなのです。

「スコット・モーガン基金」のミッション

――あなたの財団と、そのミッションについて教えてください。

フランシスと私は、事故や病気、老化などによる重度の障害と共に生きることの意味を、AIとハイテクの力で変えることに情熱を燃やしています。

2018年、私たちは「スコット・モーガン基金」を立ち上げ、独立した理事会を置く慈善団体として国の認定を受けるための複雑な手続きを開始しました。

財団の目的は、数十年先を見据えた野心的な研究プログラムの中核を担うことです。信じられないほど幸運なことに、世界でもトップレベルの頭脳が何人も参加してくれることになりました。

私たちは、世界でも類を見ない研究機関であるこの組織を、たいへん誇りに思っています。英国のチャリティ委員会に登録されている財団の公式ミッションは次のとおりです。

人工知能、仮想現実、拡張現実、ロボット工学、その他の高度なテクノロジーを倫理的に活用し、年齢、健康状態、身体ないしは精神的な障害等によって制限されている人々の能力と福祉を向上させるための研究を促進、遂行、公表すること。また、それによって公益、科学、医療、教育の発展に貢献すること。

別の言い方をすると、人類は知られざる可能性を多く秘めており、人工知能はそれらを解き放つ可能性を秘めている――私たちはそう考えています。

ロボットにも人間にも大きな伸びしろがあり、両者を組み合わせることで、それぞれの長所を最大限、引き出せるというのが私たちの持論です。人工知能は私たちの人間性を増幅させ、創造力、芸術性、器用さ、技術力、生産性を最大化してくれるでしょう。

当財団には、2人のすばらしい後援者がいます。

ひとりは、英国における障害者権利運動の第一人者である、サービトンのジェーン・キャンベル男爵夫人。もうひとりは世界でも唯一無二の、合成ボイスで活躍するコメディアンである「ロスト・ボイス・ガイ」ことリー・リドリーです。ジェーンとリーのように、当財団の反骨精神あふれるDNAを体現した仲間を迎えることができたのは、本当に幸運でした。

この地球上でとびきり自由な発想を持った革新的な企業や専門家が、もっともっと当財団に関心を持ってくれることを、私たちは期待しています。

彼らが私たちのミッションに参加し、共に障害者の未来を書き換え、ひいては人間であることの意味を書き換えるために闘ってくれるよう、願ってやみません。

(翻訳:藤田美菜子)

ピーター・スコット-モーガン 人類初「AIと融合」し「サイボーグ」として生きる英国人科学者

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Peter Scott-Morgan

インペリアル・カレッジ・ロンドンにて博士号取得(ロボット工学)。世界的コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルにて企業変革マネジメントに従事。独立後も含め、25年以上にわたって世界中の数多くの企業や政府機関のシステム上の脅威を分析し、その対応策をリーダーに助言してきた。

2017年、運動ニューロン疾患(ALS)と診断される。余命2年の宣告を受けるも、病を「画期的な研究を進めるための機会」とみなし、自らを実験台として「肉体のサイボーグ化」「AIとの融合」をスタート。自らが生き残ることにとどまらず、「人間である」ことの定義を書き換え、あらゆる人がもっと自由に生きられる可能性を追求している。

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