私が「サイボーグになっても」叶えたい3つの願い 「ネオ・ヒューマン」著者独占インタビュー:後編

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私たちは、自宅に集中治療室を設置したのです!

というより、この計画はパンデミックの前から半ば始まっていました。私が最後の手術を終えて退院するにあたり、NHSは人工呼吸器から咳止め装置、酸素ボンベ、カフ圧計、血中酸素濃度計まで、各種のハイテク医療機器を提供してくれたのです。つまり、病院仕様のベッドも含めて、わが家には必要な機材が一通りそろっていたというわけです。

念のため付け加えておくと、私の手術を機に、フランシスも専門的な医療のトレーニングを受けています。いまやフランシスは、私の膀胱、胃、大腸、肺につないだチューブの交換作業を正式に許可された、国内でも数少ない専門家なのです。

また、NHSの継続的な医療費補助のおかげで、私には精鋭スタッフによるケアチームがついています。彼らはたゆまぬ研鑽を積んで、高度な知識や技術を身につけていますが、今回のパンデミックでさらにパワーアップしました。

現在、わが家では病院の集中治療室でのプロトコルが完全に採用され、私以外の全員がPPE(個人防護具)を着用しています。ウイルスへの感染防止を念頭に置いて、ケアの手順もすべて見直されました。また、今後も継続的に手順のアップデートが行われる予定です。

いまでは、仮に私が重症化しても、ICUのベッドを塞ぐことなく治療に専念できる体制が整い、非常に安心感があります。これもすべて、新型コロナウイルスのおかげと言えるかもしれません。

「宇宙に変化を起こす」のは人類が生まれ持った権利

――あなたはかつて、イギリスで初めて同性婚を果たしたゲイカップルとして話題になりました。そして今度は、人間初のサイボーグになったことで注目されていますね。あなたが社会の常識に疑問を投げかけることを使命としているのは明らかです。ピーター・スコット・モーガンの次なる挑戦はどのようなものになるでしょうか?

「宇宙に変化を起こす」のは、全人類が生まれながらにして持っている権利だと、私は固く信じています。たとえ、私たちが絶望に打ちのめされているようなときでも。

絶望を抱えながら、ただ生きていくこともできるでしょう。一方で、私たちは不死鳥のように絶望から身を起こし、繁栄しながら生きていくこともできます。年齢や性別、育った環境、置かれている立場、抱いている願望が何であれ、私たちは皆、後者を選択することができるのです。

もちろん、絶望は私たちを怯えさせます。にもかかわらず、希望を打ち砕かれ、恐怖に直面したとき、私たちはなぜか、わざと既存のルールを壊し、運命に抗い、自分の運命を切り開こうとします。すると、時に信じられないことが起こります。私たちはあらゆる人々の未来に触れ、すべてを変えることができるのです。

私自身の行動が、この世界にどのくらいのインパクトを与えられるかはわかりません。しかし私は、次の3つの分野の未来を書き換えるために、人工呼吸器の下からあらん限りの力を振り絞ろうと思います――つまり「障害」「人工知能」「愛」の未来を。

次ページすべてのAIを「人間中心」に再構築する
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