トランプ前大統領が準備する合法的クーデター 中間選挙まであと1年、法の抜け穴を巧みに突く

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2020年大統領選では、トランプ氏は選挙前から敗北に備え、民主党支持者の利用が多い郵便投票などについて不正疑惑があると国民に訴えていた。そして選挙後には州議会・政府、連邦議会・政府、司法などに圧力をかけ、選挙結果を覆すことを試みた。2021年初に、アメリカは民主主義の崩壊寸前にあったことが最近の議会調査報告書や暴露本、報道などで明らかとなってきている。

先月、上院司法委員会はトランプ氏が、司法省を利用し、いかにして2020年大統領選の結果を覆そうとしたかについて『司法妨害』(Subverting Justice)と題する報告書を発表した。

同報告書によると、2021年1月3日夜、3時間にも及ぶ会合で当時のトランプ前大統領はジェフリー・ローゼン司法長官代行をはじめ司法省幹部に対し選挙結果を覆すよう圧力をかけたとのことだ。トランプ氏はローゼン司法長官代行を解任し、ローゼン氏の部下で、選挙不正を訴えるトランプ氏の主張を支持する司法省民事局のジェフリー・クラーク司法次官補代理に差し替えることを画策していた。だが、これに対し、多くの司法省幹部がそうなれば辞職すると表明したことで、トランプ氏は断念したという。

上院司法委「憲法危機までわずか半歩だった」

トランプ氏は、選挙後、州政府にもアプローチした。接戦となったジョージア州の共和党ブラッド・ラッフェンスパーガー州務長官に自ら電話して、バイデン氏の得票数を上回る数の1万1780票を「見つける」よう迫った。トランプ氏は実質、不正を働くよう促したのだが、同州務長官は応じなかったという。

ローゼン司法長官代行をはじめとする司法省幹部、ラッフェンスパーガー州務長官などが大統領からの圧力にも屈せず、良識に基づき民意を重視したことがアメリカの民主主義体制を救った。つまりわずか数人の手によって民主主義は堅持された。民主党のディック・ダービン上院司法委員長は、本件についてアメリカは本格的な憲法危機までわずか半歩のところにあったと語っている。

クーデター未遂に終わった年始の議事堂乱入事件は、アメリカの民主主義の最悪期だったとも捉えられている。しかし、これはトランプ氏および支持者にしてみれば、クーデターの序幕にすぎない。真のクーデターは次回大統領選に起こるとの臆測もある。

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