トランプ前大統領が準備する合法的クーデター 中間選挙まであと1年、法の抜け穴を巧みに突く
2024年の民主主義の崩壊は、クーデターとはいっても議事堂乱入事件のような外部からの暴力によって突然起こるのではなく、スーツやネクタイをしている人物、つまり政治家や弁護士によって内部から合法的に徐々に進められていくとみられている。
例えば、トランプ氏は大統領選の激戦州の州務長官の選挙において自らを支持する候補を擁立し、トランプ氏の要請に応じない政治家を追い出そうとしている。ジョージア州ではトランプ支持者の共和党ジョディ・ハイス下院議員を擁立し、再選を狙うラッフェンスパーガー州務長官の対抗馬としている。
つまり2024年大統領選に向けて、仮に激戦州でトランプ氏が民主党候補に得票数で劣っていても、選挙証明の権限を持つ州務長官をトランプ支持派にしておき、結果を覆すことができるように、といった裏工作を始めているのだ。
ロイターの調査によると、ジョージア州以外にも激戦州のアリゾナ、ウィスコンシン、ミシガン、ネバダの共和党の州務長官候補15人のうち10人は、2020年大統領選に不正があった、無効にすべき、あるいは追加調査が必要と主張している人物だという。この他にも2020年大統領選以降、共和党が牛耳る全米各地の州議会は、郵便投票や期日前投票を制限する選挙法改正を行って、現実的にマイノリティの民主党支持者が投票しにくくなるようにしている。
共和党の政治家もトランプ氏を止められない
今日、トランプ氏の支持者集会で最も盛り上がりをみせるのが、「2020年大統領選は不正だった」とトランプ氏が叫ぶ瞬間だ。もはや共和党の最重要アジェンダは、小さな政府などの伝統的なイデオロギーではなく、2020年大統領選の結果を覆すことになってしまっている。
CNN/SRSS世論調査(2021年8月3日~9月7日実施)によると、共和党有権者の59%が「共和党支持者としてトランプ氏が2020年大統領選で勝利したと信じることが『とても重要』あるいは『やや重要』」と回答している。トランプ批判の急先鋒である共和党アダム・キンジンガー下院議員は10月29日、次期選挙への出馬を断念することを表明した。
トランプ党と化した共和党において、現職の政治家は自らの再選のためには、トランプ氏の「2020年大統領選は不正」という主張を否定できない。共和党出身の政治家の大半は地元の選挙区でトランプ氏よりも党内の支持率が低いからだ。
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