新型WRX開発者の顔が「ほっこりしていた」わけ WRX S4の“綺麗な走り"を体験してわかった事

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車両開発統括部のエンジニアは、「CVTの逆襲」のためのハードウェアの新設や改良、そしてエンジンとの制御マッチングについて、「人の感じる気持ちよさを徹底的につきつめた」として自信に満ちた表情を見せた。

 

そのほか、STI商品開発部関係者からは、オプション設定の各種パーツを目の前にして、“よりアグレッシブな見た目”と“よりしなやかな走り”への実現を説明してくれた。

「レヴォーグ」の開発も手掛けた商品企画本部の五島賢氏。東京オリンピックの聖火ランナーも務めた(筆者撮影)

WRXというクルマは、クルマの作り手として“ユーザーの顔が見える商品”であり、同時に“極めたい方向性が立てやすい商品”でもあるため、クルマ好き、そしてスバル好きでスバルに入社した開発者たちにとって、やりがいがある楽しい仕事だという共通認識がある。

一方で、“これからのスバル”について話を向けると「これからはいろいろ大変だ」という声が多いのだが、「なにが」「いつから」「どう大変か」という点では、まだ意識の統一には至っていない印象がある。

盤石の今こそ“これからのスバル”を描け!

2022年にトヨタと共同開発車であるEVの「ソルテラ」が市場導入されるとしても、EV化されたWRXの姿や、アイサイトXがさらに進化した完全自動運転のスバル車の姿を、今回のWRX S4開発関係者が描ける状況ではない。彼らの言葉を聞きながら、そう感じた。

ただし、見方を180度変えると、EVシフトや完全自動運転などを進めるほかの日系メーカーと比べ、スバルはモデル数が少なく商品性が尖っているため、メーカーとユーザーがブランド価値を共有しやすい環境にあるといえる。

商品としても、今回のS4を皮切りとする新型WRXによって、全モデルがスバルグローバルプラットフォーム採用の同じ世代となり、エクステリアデザインもSUV系、セダン系、ワゴン系、そして2ドアスポーツ系でスバルの新世代観を共有するステージに立った。

スバルの歴史上、商品ラインナップとしても、またブランド戦略としても、これほど充実した時期は過去になかったと思う。このように、スバルとしての足元がしっかり固まった今だからこそ、社員が一丸となって“これからのスバル”について真剣な議論ができるはずだ。大いなる期待を持って、これからのスバルを見守っていきたい。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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