JR千葉駅に挑戦、京成「千葉中央新駅ビル」の秘策 街に足りないピース埋め、人の流れを取り戻せ

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このような状況を受けて、「千葉中央を生活に便利な駅にしたい」と清水氏は考えた。まず、気になったのは食品を扱うスーパーがこのエリアに不足していたことだ。西口周辺には大きなスーパーがない。東口からは5分ほど歩けば、ダイエー系のスーパー「グルメシティ」があるが、西口の住民にとって駅の反対側に出るのは便利とはいえない。

京成千葉中央ビルの1階には食品スーパーが入居する。開店準備中の様子(記者撮影)
3階に入居するシェアオフィス(記者撮影)

そのため、住民の意向を踏まえ、1階に食品スーパーを入居させることにした。京成の調査では駅から1km圏内の商圏人口は約3万2000人。年齢別では40代、30代が多く、単身世帯、2人世帯の割合も県平均より高い。そのため、惣菜や少量食品の取り揃えを増やした。2階に100円ショップを入居させたのもこうしたエリア特性を踏まえてのことだ。

3階に入居するシェアオフィスは、「当初は想定していなかった」(京成)というが、コロナ禍による在宅勤務やテレワークのニーズを踏まえて急遽入居を決めた。やはり京成グループが運営する。会議室なども備えており「フリーランスや副業の需要にも応える」(京成)という。

千葉中央をモデルに動き出す街づくり

スーパーとシェアオフィスが入居することで、千葉中央駅周辺の生活インフラが整うことは間違いないが、それだけではない。千葉中央駅と京成千葉駅・JR千葉駅との間は高架下のショッピング街でつながっているが、経営主体は区間によって異なる。千葉中央寄りのショッピング街「Mio(ミーオ)」は京成グループが運営している。

これまで千葉中央エリアの居住者がJR千葉駅寄りのショッピングストリートで買い物するというケースも多く見られた。しかし、スーパーや100円ショップが開業すれば、すぐ近くにあるミーオで買い物をする人が増えるかもしれない。JR千葉駅から千葉中央駅への回帰が期待できるのだ。

10月29日のオープン当日、千葉中央駅のスーパーは普段なら閑散としているはずの平日昼間にもかかわらず、大勢の客で賑わっていた。ファストフードコーナーも多くの店で行列ができていた。コロナ禍を忘れさせるほど上々のスタートを切ったといえる。

京成は今年3月に八千代市と、8月には酒々井町とそれぞれ包括連携協定を結んだ。八千代市とは街の魅力の創出や向上に、酒々井町とは沿線価値の向上に取り組んでいくという。両者の詳細はまだ決まっていないが、「千葉中央駅の取り組みと目指す方向性は変わらない」と京成の担当者は話す。千葉中央駅をモデルケースに、京成の新たな街づくりが動き出した。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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