じつは「エクリプスPHEV」が発売された折、比較対象として前型アウトランダーPHEVをやはり敷地内のサーキットコースで運転したことがある。もちろんエクリプスクロスPHEVは前型アウトランダーPHEVより小型なので、より敏捷な走りを体感させ、小型ハッチバック車でも操るかのような気にさせた。それに対して前型アウトランダーPHEVは、動きが鈍いというわけではないが、より重量級の大柄なSUVの持ち味で、山間を縫うような道を楽しむより、長距離を快適に移動するのに適したSUVという印象だった。
ところが、新型アウトランダーPHEVは、ハンドルを左右へ操作をしたときの身軽さが、屈曲路などの運転も楽しませるのではないかと思わせた。もちろん、エクリプスクロスPHEVとは持ち味が異なり、小型ハッチバック車とスポーティセダンというような違いはある。それでも前型に比べ車体は大柄になり、バッテリーが増量され、車両重量が重くなっているはずなのに、そうしたネガティブ要素を感じさせない爽快さがあったのである。
試乗を終えてクルマを降りると、パリ~ダカール・ラリーで総合優勝をした増岡浩氏が「いいクルマでしょう?」とほほ笑んだ。極限の走りを制覇したプロフェッショナルをも微笑ませる仕上がりである。
PHEV技術のセダンへの展開に期待膨らむ
試乗を終えて改めて思うのは、今人気のSUVのフラッグシップとして新型アウトランダーPHEVの価値が高まったのはもちろんだが、その出来があまりによいので、個人的にはこのプラグインハイブリッド手法を活用した上級セダンがあれば、さらにフラッグシップとしての価値を明らかにし、三菱自動車工業のブランドをいっそう前進させるのではないかと感じるのである。
一方で、現在の三菱自動車工業は、経営の柱を電動化とSUVの2本に絞り込んでいる。それが、三菱自動車工業の持ち味を存分に活かした商品体系を作り出しているのは間違いない。それでも、前型アウトランダーPHEVが、北欧を中心に存在価値を示した欧州市場では、ブランドを牽引するのは今なおセダンである。年間販売台数が60万台超のボルボでも、主力はSUVだが、セダンを車種構成に加えている。
今すぐにというわけにはいかないかもしれない。だが、新型アウトランダーの実力を体験すると、上記のような構想がおのずと湧き起こるのである。
またセダンへのPHEV活用の場が、提携関係にある日産自動車へ広がっても興味深い。日産には、スカイラインやフーガといった上級セダンがある。それらが新型アウトランダーPHEVを応用した次世代型として新登場すれば、相当に高性能かつ上質なセダンを形作ることができるのではないか。そんな妄想を思わせるほど、新型アウトランダーPHEVの試乗は衝撃をもたらしたのであった。
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