「会社辞め、起業したい人」に学んでほしい7大失敗 事業を失敗に導く人の姿勢には共通点がある

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私は「起業のプロ」ですが、起業が簡単なことだとは思いません。それどころか、あらかたの起業は失敗します。その失敗の中で、粘り強く頑張っていくのには意志が不可欠です。ときどき、「強い意志を持つほどの原体験がありません」という方がいます。

しかし、僕はどんなものでも原体験にはなりうると思うんです。例えば、「顧客からこんなことを言われた」「家族と話していたらこんな話題になった」といったことが事業につながることもある。意志の資源となるものは、意識をすればいくらでも転がっているのです。

実際に、意志を持って会社から独立した方のエピソードをご紹介します。障害のある方に特化したBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)プラットフォーム「NEXT HERO」を運営しているVALT JAPAN(ヴァルトジャパン)の事例です。

2014年に創業したヴァルトジャパンは、データ入力や清掃、部品の検品などの仕事を企業や自治体から受注し、全国の就労継続支援事業所に発注する仕組みを作っています。

精神疾患の患者会で受けた衝撃

代表の小野貴也さんは、もともと製薬会社でMRをしていました。ある時、小野さんは精神疾患の方々の患者会に参加します。そこで、小野さんは衝撃を受けます。多くの方が「仕事の成功体験がなくてつらい」という話をしていたからです。

それまで小野さんは、効果の高い薬を使ってもらうことで、患者の方のQOLを上げられると考えていました。しかし、大事なことは薬を使ってもらうことではなく、仕事における成功体験を積んでもらうことなのではないか、と思うようになったのです。

調べると、病気から復活し再就職しても仕事を軌道に乗せられず、ふたたび病気を繰り返している方が多いことや、就労継続支援事業所の平均月給が1万円台(B型事業所)であるということなどがわかってきました。さらには、少なくない企業が障害者法定雇用率2.3%を達成できず、納付金を支払っている現状も見えてきました。つまり、障害のある方が仕事で充実感を得る場が極端に少ないことがわかったのです。

そこで小野さんはヴァルトジャパンを立ち上げます。「誰かに喜んでもらいたい」「もっと社会に貢献したい」という障害者の方の純粋な気持ちを、「仕事」を通じて叶えたいという意志が起業の根底にはありました。

ヴァルトジャパンは、就労継続支援事業所が自ら営業をしにくいという課題を解決したり、間に入り民間企業の求める発注に安定的に応えられるよう品質管理をしたりといった責任を負いました。これにより、企業と事業所の双方が安心して受発注を行うことができるようになりました。

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