ワクチンじゃない?謎のコロナ急減解く3つの鍵 ロックダウンなど強い行動制限なしでも急減した

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この要素の今後の見通しへの影響は、周期がなぜ生まれるかに依存する。冬に拡大・4カ月後にアルファ株が蔓延・その4カ月後にデルタ株が蔓延したことで外生的に120日周期が発生してきたとする。そうすると、冬にまた拡大すると考えることもできれば、デルタ株よりも強い変異株が出てこない限り、拡大はもう起こらないと考えることもできる。もしこのような周期が上記したような人々の自主的なリスク回避行動によって内生的に発生するのであれば、それは再度波が来る可能性を示唆する。

急速な感染減少の政策含意

今回のレポートでは、急速な感染減少に関するいくつかの仮説の定量的重要性を分析した。こういった分析の結果は分析手法によって大きく変わる。したがって、われわれの分析結果を真実として受け止めるのではなく、今後出てくるであろう数ある分析結果の1つとして受け止めていただきたい。また、われわれもこの分析を最終地点として位置付けているわけではなく、今後も分析を続ける。分析でわかりにくい点・物足りない点等があれば、気軽に連絡していただけるとありがたい。

分析によって上記した3つの仮説が有力に見えてきたが、これら3つの仮説のすべてがある程度正しいのか、1つが正しくてほかの2つはまったく間違っているのか、等はまったくわからない。しかしながら、どの要素がどのくらい感染減少に貢献したかにかかわらず今回の感染減少からはっきりとしたことがある。それは「ロックダウン等の強い追加的行動制限なしでも感染は急速に減少することがある」という事実である。

この事実は、今後感染症対策と社会経済の両立を考えていくうえで示唆がある。もし周期性や医療逼迫によるリスク回避説にある程度の正当性があるのならば、感染拡大時において休校・時短要請・イベントでの人数制限等の追加的な人流削減政策を打たなくても、感染はある時点で減少に向かうと考えられる。政府は人々に正しい情報を提供することに徹することが重要であると言えるかもしれない。

上記の事実は、行動制限政策が無力であることを必ずしも意味しない。柔軟性があるとは言いがたい医療体制、保健所や一部のコロナ患者受け入れ病院の疲労、高齢者の重症化率や致死率の高さ等を考慮すると、行動制限政策が効果的な局面もあるかもしれない。

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だが、そういった政策は社会・経済・文化・教育へ多大な負の影響をもたらす。飲食・宿泊業に従事されている方々をはじめ、これまで多くの方々がさまざまな生活の犠牲を払ってきた。自殺者もコロナ禍で若い世代を中心に増加しており、子ども達への発育・教育への長期的な負の影響も懸念されている。

今回の経験を記憶に刻み、「感染のリスク評価」と「感染症対策のリスク評価」の両方に配慮しながら意見形成・政策判断をしていただけたらと願う。

仲田 泰祐 東京大学大学院経済学研究科 准教授

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なかた たいすけ / Taisuke Nakata

米連邦準備理事会(FRB)の主任エコノミストを務めた金融政策とマクロ経済のプロフェッショナル。2020年に日本に活動拠点を移した後、新型コロナの感染と経済影響に関する試算で注目を集める。1980年生まれ、2003年シカゴ大学経済学部卒業。カンザスシティ連銀調査部からキャリアを始め、12年にニューヨーク大博士(経済学)。「社会に役立つ分析」を掲げる実践派経済学者の代表選手。

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