人流データの8月後半以降の実現値を仮に当時知っていて、過去の人流と感染の相関関係を利用していたら提示していた仮想の見通しが図1の青い線である。
この見通しによると、8月後半以降も感染拡大が続き10月第1週には1日新規感染者数約7000人となっている。この仮想見通しは、後ほど言及する当時の藤井仲田チームが提示していたものとは違うことは留意していただきたい。
(外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
この仮想見通しをベースとして「感染減少要因として挙げられている要素を考慮していたら見通しはどのくらい減少したであろうか?」というシミュレーションをすることで、それぞれの要因の定量的重要性を探っていく。
ワクチン接種が遅くても感染減少は起こっていた
1つひとつの要因を眺める前に強調しておきたいポイントは、上記の仮想見通しはその後に観察されたワクチン接種率向上を考慮していることである。ワクチン接種率向上をきちんと考慮してもここで提示した見通しは感染減少を予見できていない。程度の違いはあれ、この特徴は8月中旬に提示されていたさまざまな研究チームによる見通しに共通している。
ワクチン接種率向上が8月後半からの急速な感染減少の説明としては成り立ちにくいことは、ワクチン接種がこれまで感染抑制に貢献していないということではない。図2では、仮にワクチン接種ペースが遅かった場合の感染の推移を計算しているが、7月後半からワクチンが感染拡大を大きく抑制してきたことが読み取れる。それと同時に、感染推移の輪郭はワクチン接種の有無には強く影響されないことも読み取れる。
ワクチン接種ペースはこれまで連続的に推移しているので、ワクチン接種の影響だけで感染がある時期に急速に増減することは起こりにくい。8月後半からの感染減少のタイミングと急速さを説明するためには、ワクチン以外の要因も必要そうだと言える。
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