野党善戦で緊迫「自民単独過半数」狙う首相の命運 「統一候補の効果は予想以上」と自民選対は警戒

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自民党は2012年12月の衆院選で政権復帰を果たし、その後2回の衆院選では、同党だけで絶対安定多数を大きく超える議席を獲得してきた。

それだけに、岸田首相にとって今回、自民党単独で最低でも安定多数以上の議席を確保できれば、政権運営の安定度は格段に増す。自民党の議席が減ってもメディアは安定多数確保を理由に「自民勝利」と報道せざるをえないからだ。

その一方で、2009年衆院選以来となる自民半数割れとなれば、選挙前の自民議席(276)から44以上の大幅議席減となり、過去の例から見て「首相の責任論浮上」は避けられない。もちろん、第2次岸田政権発足は確実だが、激戦だった総裁選で生じた党内の亀裂も拡大し、内閣支持率低下が重なれば、来夏の参院選に向けで“岸田降ろし”の動きも誘発しかねない。

各調査での序盤情勢の具体的データは非公表だが、各党の選対などによると調査での各党それぞれの獲得予測議席数の平均に近い中央値(基数)は、自民240前後、立憲130前後で、公明は現状(公示前29議席)維持以上、維新(同11議席)2倍以上、共産(同12議席)数議席増とされる。

当然、それぞれの数字には一定の増減の幅があり、このまま情勢が変わらなければ自民獲得議席の最低は220議席台となる見通し。これに公明の議席を加えれば最低でも250議席を超え、数議席が見込まれる自民系無所属の当選議席を加えれば与党で絶対安定多数に近い勢力確保が可能だ。

勢い増す野党統一候補、当落線上の自民候補は50人以上

ただし、今回衆院選の最大の特徴は、立憲民主、共産両党を中心とする野党統一候補擁立が、全289小選挙区の7割を超える210議席超に達したことだ。完全な与野党対決型の選挙区が史上最多となり、それが自民苦戦の最大の原因となっている。

自民党は当初、菅義偉前首相の退陣で政党支持率が10ポイント前後上昇したことで、「議席減はかなり抑えられる」(岸田派幹部)との楽観論が多かった。しかし、選挙戦が始まると北海道や東北、北陸さらには東京のかなりの小選挙区で野党統一候補の勢いが増しており、全国を見渡しても当落線上の自民候補は50人以上とされる。

その結果、終盤戦の展開次第では、自民獲得議席は序盤情勢調査での中央値から20以上減る可能性もありうる。

自民は安倍政権下などでの前3回の衆院選で圧勝したが、若手を中心に1~2万票程度の僅差で競り勝った議員も70人程度存在する。今回、統一候補擁立に舵を切った共産党は各小選挙区で2~3万の組織票を持つだけに、「統一候補効果は予想を超える」(自民選対)のが実態だ。

その一方で、立憲、共産両党の統一候補合意の前提に「共産党の閣外協力」が掲げられたことが、「有権者の統一候補支持のブレーキになる」(同)との見方も根強い。岸田首相や甘利明幹事長ら自民最高幹部が「共産党が参加する政権を許していいのか」と連呼しているのは、有権者の“共産アレルギー”をかき立てようとの戦略だ。

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