野党善戦で緊迫「自民単独過半数」狙う首相の命運 「統一候補の効果は予想以上」と自民選対は警戒

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そうした中、岸田首相周辺が懸念しているのは、存在が目立つ党幹部や閣僚の「失言」「暴言」だ。「街頭演説などで興奮して言ってはいけない発言をしてしまい、メディアに報道されると簡単に10議席ぐらい減る」(岸田派幹部)からだ。このため、自民執行部は「くれぐれも発言は慎重に」と“要注意議員”に伝えているとされる。

そこで各党、各陣営が神経を尖らせるのが投票率だ。2017年の前回衆院選は53%台と極めて低率だった。さらに2019年参院選は50%の大台も割り込んでいる。各種世論調査での「必ず、あるいは多分投票に行く」という回答は8割前後だが、「従来と同じで大幅投票率アップにはつながらない」(選挙アナリスト)との見方が多い。

そもそも、「投票率アップは、若い世代や無党派層の投票拡大」(同)だ。しかも、各種調査結果から「無党派層の投票が増えれば、自民党に不利になる」(同)との見方が常識的。このため、自民党内でも「投票率が1%上がれば、自民の議席が2つ減る」(選対)との観測も広がる。

注目される「眞子さま結婚」の影響度

そうした中、国民的注目を集めている眞子さま結婚記者会見が10月26日午後に予定されている。まさに「全メディア注目のビッグイベント」(同)だ。民放テレビ各局は「絶対に視聴率が稼げる」(幹部)と特別企画番組の準備などで手ぐすねを引く。

その場合、視聴率の高い各局のワイドショーなど情報番組は、「週末までの数日間は眞子さまご結婚一色になる」(同)とみる向きが多い。当然、衆院選に関する情報は「選挙戦最終盤で大幅減となりかねない」(同)。

永田町では、「岸田首相がそうした事態も想定して投票日の前倒しをした」(立憲民主幹部)とのうがった見方も流れる。その一方でネット上では「#投票に行こう」とのハッシュタグもあふれる。

運命の投開票日まであと8日。「予想以上に元気で体調も万全」と張り切る岸田首相が10月31日夜に笑顔を振りまけるのかどうか。「現状では誰も予測できない」(自民長老)のが実態だ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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