「悪質クレームをしてしまった人」が語った本音 千人調査で回答者の約半数が「やった経験あり」

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桐生教授が専門とする犯罪心理学では、犯人像を割り出す「プロファイリング」のように、膨大なデータを統計的、心理的に分析する手法がよくとられる。

実際、桐生教授は2020年にカスハラをしてしまった人の調査を実施している。全国2060人の男女を対象にしたウェブ調査で、自身が過去にした最も印象に残っている悪質クレームについて答えてもらうというものだ。

「やる前は正直に答える人はいないんじゃないかと周りから言われたのですが、実際には全体の44.9%に相当する924人が、悪質なクレームをしたことがあると答えたんです」

クレームの形式としては「淡々と静かに話した」(629人)が最多だったが、「攻撃的な話し方や言葉があった」(71人)、「大声を上げるときがあった」(63人)、「お店や担当者に対し罵詈雑言があった」(11人)などもあった。ついやりすぎてしまったと、決まりが悪い思いをしているのかもしれない。

結果を多重的に分析したところ、悪質クレームの形式には性差があることなども見えてきたという。たとえば、大まかに次のような傾向があるという。

・【男性】45歳以上が店員のミスや手続き不備などを理由として、高圧的な態度をとり、上層部からの謝罪を受けるタイプが多い
・【女性】45歳未満が商品の欠陥を理由として、女性店員に対して淡々とクレームを述べ、商品や商品代を受けるタイプが多い

「今回の調査では年収1000万円以上の人たちにおいて、悪質クレームの経験がない人よりもある人のほうが多いという結果も出ました。さらなる調査・分析が必要ですが、経済状態の悪い人がストレスのはけ口にしているというような見方は、必ずしも正しくない可能性があります」

被害者側調査でも男性のカスハラ目立つ

これらの結果は、カスハラ被害者側へのアンケート結果ともおおむね一致するという。

たとえば、サービス業などの労働組合「UAゼンセン」が2020年に実施した組合員調査では、迷惑行為をした客の性別は男性が74.8%だった。推定年齢別では、50代以上が全体の約70%を占めており、「45歳以上の男性が威圧的態度を取るケースが多い」という加害者側アンケートの分析結果に似た結果だ。

次ページ受けた被害の内容にも性別による傾向が
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