「先進医療特約」の割に合わないカラクリ 確率で考えれば、月100円しない理由がわかる

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「期待値」をご存知でしょうか?確率とそれが起こったときの金額などを掛け合わせた数字です。がんの先進医療を受ける期待値を計算してみましょう。確率は0.02%(=0.0002)で、平均単価は98.4万円ですから、

0.0002×98.4万円=196円強

となるのです。

一方で先進特約の保険料は年間で1000円ぐらいです。10年で約1万円、20年で約2万円です。とても割に合わないように思えます。

重粒子線治療は6回も受けられない

ちなみに先進医療の治療代を最大2000万円まで保障するということですが、この保障を上限いっぱいまで使うということは1回303万円の重粒子線治療を6回くらい受ける計算になります。しかし、ある大学教授によれば、そんなに受けると「患者の身体がもたない」のだそうです。「6回までいくと、治療というより人体実験」と呆れるぐらいです。

あるがん保険セミナーでは重粒子線・陽子線治療の施設が建設ラッシュを迎えると強調していました。が、重粒子線治療や陽子線治療は、ステージや患部が限られていて、誰でも受けられるものではないそうです。ある保険会社の人は「重粒子線治療や陽子線治療の対象となるのは浅いステージ。それだったら『患部を切除する』と判断する医師が多いのではないか」と首を傾げます。また、ある保険研究家は、「重粒子線治療や陽子線治療の施設建設は町おこし、村おこしの一種」とまで言い切ります。

こういう話を聞いて、「先進医療特約はつけなくてもいいのではないかな……」、と思うのは筆者だけでしょうか。

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山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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