課題山積でも「日本でEV普及が急加速できる」根拠 電力不足や充電渋滞は工夫すれば回避できる

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――こうしたインフラ整備には多額のコストがかかり、一方で収入は限られます。民間企業がきちんとしたビジネスモデルを描けるのでしょうか。

EVは猛烈な勢いで価格低下が進んでいるため、車単体で儲けるのは難しくなるかもしれない。安くなったEVを活用してどんなビジネスを展開するかが重要になるのではないか。

EVと自動運転を組み合わせた運送業、家の電力とEVを組み合わせたV2Hのサービスなど、EVを活用して業界の垣根を超えたサービスを考えていくことになる。

急速充電器はこうした新しいビジネス候補の1つになるだろう。実際、テスラは自前で急速充電器「スーパーチャージャー」を整備して顧客サービスの強みにしている。最近は他メーカーに充電網を開放するという話もあるが、その場合はテスラに巨額の収入をもたらすとも言われている。

欧州は充電網に対する民間投資を呼び込めている

欧州では先を争うように事業者が急速充電器を整備している。ユーザーは契約している事業者なら安く充電できるが、契約外の事業者だと高い。事業者は携帯電話のローミングにも似たこの商売で競っており、よい充電器の設置場所は取り合いになっている。充電網に対する民間投資を呼び込めているといえる。

EVの電力が余っているときに系統につないで電力会社に売るといった商売もあるかもしれない。周辺サービスを含めて今から取り組んでいくことが大事ではないか。

――EVシフトが進むと、雇用への打撃は避けられません。

今後EVの価格が安くなって充電環境も整うと、EVがメジャーになると見られている。すでに、ノルウェーなどの国では実証されていることだ。

ただ、EVは部品点数が少ないうえに車両価格も下がっていくため、生産台数あたりの雇用も減ると見られている。

しかも、各国が巨額の支援を行い、コスト・規模・技術のすべてにおいて激しく競い合っている。欧州は中国などへの対抗を念頭に、域内での生産・雇用を確保するように動いている。アメリカも同じ。EVをあきらめることは、自動車産業をあきらめると同義だと捉えられている。

EVが普及すると、どのみち産業構造も変わらざるをえず、その変化の規模も大きくなるはずだ。それが日本も含め、各国の自動車業界が政府への支援を求める理由になっている。国全体でこの課題を認識しておく必要があるのではないか。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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