気候変動政策への対応「トヨタ最下位」評価のなぜ 格付けした英研究機関の共同創設者に聞く

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――日本以外の自動車メーカーの評価はどうでしょうか。

世界的にみると、この3年間でBEVの販売台数は大きく伸び、BEVメーカーの企業価値も上がっている。

2019年10月、アメリカ上院民主党の特別委員会にてタナー氏は「ダークマネーと気候変動対策への障壁」について証言した(写真提供:インフルエンスマップ)

2030年までに新車販売の半分をEVにすることを掲げるVWは「C-」で、直近3年間、われわれの調査で高いスコアを獲得している。

逆にここ数年スコアが低下していのが、トヨタやアメリカのゼネラルモーターズ、フォード・モーターなどだ。テスラを除くほとんどの会社は、いまだにHVを含むICEの段階的廃止の時期を遅らせ、ゼロエミッション車の割り当てを義務付ける政府の取り組みに反対しているようにみえる。

とりわけトヨタには、これまで強みとしていたHVやPHV(プラグイン・ハイブリッド車)の役割を長期化させるという思惑があるとみられる。この姿勢は、野心的なICE廃止時期を支持する多くの政府の声明と対立することが多くなっている。

各国政府、IPCCとの「見解の相違」解消が必要

――トヨタは完全な電動化ではなく、HV、PHV、EV、FCVのミックスがベストだと考えています。これについてはどうみていますか。

新型小型車における主要な自動車メーカーのCO2排出量や燃費の効率性において、トヨタをはじめ日系自動車メーカーが欧米の企業よりも優れているのは事実。一方、当社が保有する自動車生産台数のデータを用いた主要な自動車メーカーのZEV(BEVおよび燃料電池)比率をみると、テスラがトップでトヨタは最下位だ。このデータにはHVとPHVは含まれていない。

繰り返しになるが、自動車メーカーの技術戦略に関する見識をわれわれは持たない。各国政府やIPCCの声明に基づき評価を行っている。それによればトヨタと世界における多くの政府、またIPCCとの間にHVとPHVが果たす役割の期間に関する見解の相違があるのは間違いない。ここを解消しなければ、トヨタのスコアが改善することはないだろう。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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