実家が迷惑施設化「7戸に1戸空き家」日本の大問題 草木は伸び放題、害虫が発生、建物も老朽化
都道府県別で見ると、空き家率のワーストランキング(2018年)では、1位が山梨県(21.3%)、2位が和歌山県(20.3%)、3位が長野県(19.5%)である。甲信越や四国で空き家の比率が高いことがわかった。ちなみに空き家率の低いベストランキングでは、1位に埼玉県と沖縄県(ともに10.2%)が並んでいる。
もちろん国も手をこまぬいてきたわけではない。前述した通り、2015年には、空き家対策特別措置法が全面施行。管理不全な空き家に対しては、行政が立ち入って調査をできたり、所有者の確認など個人情報を取得しやすくなった。「特定空家等」に指定されると、軽減されている固定資産税などの特例から除外され、最後は行政代執行も可能など、ペナルティ的な要素も含んでいた。
地方も早くから動いてはいた。市区町村ベースでは、2010年の埼玉県所沢市を筆頭に、空き家条例が次々成立。また各地で空き家バンクも設立され、空き家を売りたい・貸したい人と、空き家を買いたい・貸したい人を仲介する試みも広がりつつはある。
だがこれまで利用がどんどん進んでいたとは言いがたい。法制度の整備などで「空き家への関心は高まったが、まだまだ取り組みが進んでいない」(あるNPO法人代表)のが実情である。
とくに空き家バンクでは、登録する物件数が少ない、居住希望者のニーズとマッチしない物件が多い、などの課題がある。また、営利で行う民間の不動産業者と違い、空き家バンクは仲介に関与せず、当事者同士で交渉する必要があるなどの問題も明らかになった。空き家を通じ移住を促進したい地方と、あえて望んではいない都市との温度差も指摘されている。
近所の”迷惑施設”をどう処理するか
実家が空き家となり、放置されれば、近所にとっては”迷惑施設”でしかない。また人が住んでいたとしても、認知症などでセルフネグレクト(自己放任)になり、家のケアをしなければ同様だ。
草木が伸び放題で、道路にはみ出る。ハエやネズミ、ゴキブリが発生したり、野良猫が住みついたりして、衛生環境が悪化する。建物が傾いたり、屋根や外壁が老朽化して落下する……。ゴミが不法投棄されたり、不法侵入者が現れるなど、犯罪の温床にもなる。
特定空き家の場合、近隣住民から自治体に苦情が寄せられ、所有者に通知されるパターンが多い。いや、それでも通知されればいいが、所有者と連絡がつかない例も多い。中には何代にもわたって相続が登記されなかったり、兄弟姉妹などで家を共有したため物事が何も決まらなかったり、というのがよくある光景だ。
当然ながら家は、持つのにも、処分するのにも、コストがかかる。水道や電気は引いているだけで基本料がかかるし、火災保険料、さらには庭木の剪定費や、毎年かかる固定資産税も。分譲のマンションでは修繕積立金などが要る。
いざ片付けようとしても、子が自分の持ち家から実家に通えば、交通費もばかにならない。親が亡くなった後の遺品整理で、物が膨大な現実に困り、整理業者などのプロに依頼すると、数万円から数十万円を請求されることもある。
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