ソニーがやめたAIBOと復活したaiboの決定的な差 経営陣が描くストーリーにハマるかどうかがカギ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ソニーは、エレクトロニクス事業の再建を最優先課題とし、プラズマテレビからの完全撤退など8事業のリストラを発表します。ロボット事業も、そのリストラ対象事業に含まれ、研究開発を縮小することを言い渡されます。なかなか停滞から抜け出せないロボット事業は、当初からハードウェアには反対であり、もはや余裕を失った出井会長の再建ストーリーと整合しなくなってきたのです。

そして2004年には、土井氏が開発し発表直前までこぎつけていた2足歩行のロボット「QRIO(キュリオ)」の発売中止が社内決定されました。これからのロボットのポテンシャルを信じ、AIBOに引き続きQRIOに望みをかけていた土井氏は、発売直前でのこの中止命令を下した出井会長に対して猛反発をしますが、決定は覆りませんでした。

そして、時を置いて2006年1月、とうとうAIBOにも生産中止の判断が下されます。世界で約15万体売れ、まだ熱狂的なファンがいる段階で、この画期的なプロダクトは無情にもその愛くるしい姿を表舞台から消すことになるのです。

短期的収益というモノサシには合わなかった

画期的とも言われたAIBOの生産がなぜ打ち切られてしまったのか。端的に言えば、短期的な収益を期待するのが難しい商品が、その可能性を理解されずに、短期的な収益を求められる環境に置かれてしまった……ということにほかなりません。

AIBO事業のメンバーにとっては、徐々にマーケットを育てながら、もう少しすれば芽が出始めるというタイミングでのこと。会社全体がリストラ局面にあったとはいえ、受け入れがたい意思決定だったはずです。

自社以外のサードパーティも含めた「エコシステム」が育ち、ビジネスとして採算が取れるようになるにはそれなりの時間がかかります。消費者にとっても、直接役に立つ必需品ではないので、最初は理解されにくい。だからこそ、企業側もそれを長い目で見て待ち、育てなくてはなりません。

残念ながら、2000年初頭のソニーには、判断の尺度に「遊び」がなく、短期的な収益というモノサシしか持てなかった。AIBOの撤退はそのモノサシで測られてしまった結果の悲劇というしかないでしょう。

このAIBOにはまだその後のストーリーがあります。2006年に生産終了したAIBOですが、2018年1月11日に「aibo」としてバージョンアップしたロボットとなって再度登場するのです。その背景には、家庭用ロボット需要がようやく見えてきたことに加えて、「復活するソニー」のストーリーに整合する、ということがありました。

次ページ「遊び心」や「ユニークさの追求」のシンボル
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事