千葉の酒屋が清澄白河で「角打ち」を始めたワケ アルコール提供制限の影響を大きく受けたが…

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このように、「次世代にお酒の文化を伝えていきたい」というあづさ氏の情熱を、大手広告会社に勤務する小島氏の企画力がサポートし、これまでにない形のアプリ連動角打ち店舗が実現した。

古くは深川と呼ばれた界隈の住宅街に溶け込むように佇む「いまでや 清澄白河」(筆者撮影)

同店が立地するのは、深川という江戸の雰囲気を伝えながらも、ギャラリーやコーヒーロースタリーが点在し、最近ではクラフトビールや日本ワインの専門店など、コンセプチュアルな店舗が増えつつある地域だ。

小島氏は大家として運営を手伝いながら、最も近い客としても、ちょくちょく店舗に顔を出している。アルコールが全面解禁になれば角打ちも本格的に始動し、小島氏がお得意さんとしてお客に一杯ふるまうという場面も見られるようになりそうだ。

このように小島氏がいまでやの運営をサポートしているところも、江戸時代の長屋の大家と店子の関係を思わせる。新しいコミュニティーの生まれる場として、地域の魅力が高まりそうだ。

今後の戦略は?

さて、いまでやでは、こうしたアプリや店舗を新しいツールとしながらECを拡大させつつ、コロナ後に向けて仕込みを開始しているという。社長の小倉氏は次のように語る。

「コロナ前には当面戻りません。業界のほとんどの企業が赤字で、一部撤退も始まっています。当社を始めとして、酒販店は生き残りのための努力をこの1年半続けてきています。アルコールが出せないからダメ、では始まらないので、あの手この手で考えます。当社は飲食店に対して『成功体験共有型営業』を行っています。具体的には、ノンアルコールカクテルやティーペアリングといった高付加価値の商品を提案して、お店のお客さんに喜んでもらう。そうすればお店もうれしい。ハッピーを共有して、1万円、2万円といった小額から取引を始める、というやり方です」(小倉氏)

こうした営業の際に役立つのが、GINZA SIXや錦糸町の角打ち式店舗の実績だそうだ。とくに銀座は家賃コストも高く採算的には厳しいが、業界内での同社の知名度や信頼感アップ、存在感の確保につながっているという。

このように、多面的に事業を行いながら、それを武器に、つねに次の一手を打ち続けているところに、同社の特徴がありそうだ。また、コロナに関係なく続けてきた努力が、コロナを乗り越えるためのベースを作ってきている。このことは、今の時期に業績アップとまではいかないまでも、何とか経営を維持できている企業の共通点と言えるだろう。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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