千葉の酒屋が清澄白河で「角打ち」を始めたワケ アルコール提供制限の影響を大きく受けたが…

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この「はじめの100本」および「いまでや 清澄白河」については、同社専務であり、社長夫人の小倉あづさ氏率いる「マダムイマデヤ」という別会社にて企画、運営を行う。いまでやの関係会社としてブランディングや人材育成を担当する会社であり、「はじめの100本」や「いまでや 清澄白河」にも、ユーザーの裾野を広げるという役割を持たせている。

新事業への思いを、あづさ氏は次のように説明する。

「若い人の酒離れが問題になっていますが、これは今お酒の業界を担っているわれわれの責任。一言で言って、若い人に優しくない業界だからです。専門店でお酒を買うのもハードルが高いし、飲みに行っても、『知識がないと恥ずかしい』という雰囲気があります。若い世代は未来の顧客。最初からいいお酒を知ってもらうために、『はじめの100本』を考えました」(小倉あづさ氏)

ニーズを喚起するのは「ストーリー」

若い人にお酒を知ってもらうと同時に、お酒の価値向上にも取り組んでいきたいという。品質に対し価格が低いのも問題で、かえって酒の価値を低下させているそうだ。低価格であるのは、蔵元などの労働コストが反映されてないことも一因。労働や努力をコストにのせないのは日本人としての美徳ではあるが、職業としての魅力が低下してしまい、若い人への門戸を閉ざす原因になっていると指摘する。

「Z世代と言われる若い人たちは、車やブランド物などにはお金を使わないけれど、自分が価値を認めたものにはお金を使います。ニーズを喚起するポイントとなるのはストーリーであり、ロマンです。お酒は、生まれた土壌や歴史、人など、さまざまな物語を背負っています。以前は“おじさん”がおごって教える文化がありましたが、今はほとんど絶えてしまっています。角打ちの形式がその代わりになるのではと期待しています」(あづさ氏)

その担い手となるのが、新たな店舗、いまでや 清澄白河だ。

7.5坪と小さな店はほぼカウンターで占められている。ここでスタッフが勧めるお酒やおつまみを楽しみながら、お得意さんや一見さんなどが入り交じり、お酒を仲立ちにしたコミュニティーが生まれていく(筆者撮影)

同店はその立ち上げの経緯からして物語のようだ。同店の入っている建物の“大家”、小島雄一郎氏はリモートワークが増えたことをきっかけに、仕事場としても使える3階建ての住居を新築。ローン返済の一助として1階に“店子”を入れることを考えた。

「どうせなら地域や日本文化の保持に役立つ取り組みにつなげたいと思い、いろいろ調べたところ“角打ち”というお店の形式や、いまでやさんの存在を知りました。興味を持って連絡をとり、あづささんと相談しながら、『はじめの100本』を含めたお店のコンセプトを決めていきました」(小島氏)

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