ホンダですら「脱エンジン」過激なEV競争の現在地 VWは「ゴルフ」より3割以上安いEVを投入予定

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一方、トヨタ自動車はEVシフトに猛進する欧米勢と異なり、あくまで「全方位戦略」を掲げる。2030年までに販売全体の8割にあたる800万台を電動車にする計画を発表しているが、主軸はあくまでHVで、プラグインハイブリッド車とあわせて600万台。EVはというと、燃料電池車(FCV)とあわせて200万台という計画だ。

豊田章男社長は「敵は炭素であり、内燃機関ではない。カーボンニュートラルに向けて技術の選択肢を広げたい」と語る。

EVが世界新車販売に占める割合は、現在3%にすぎないが、各社の投入が本格化する25年以降、急速に普及するとの見方もある。アメリカのボストン コンサルティング グループは、35年にはEVが新車販売の45%を占めるまでに拡大する一方、ガソリン車は11%まで減ると予測。簡易式のマイルドHVを含めたHVは35年に38%を占め、EVの普及期においても一定の存在感を示すことになる。

さらに、現時点で、EVで収益を上げられるメーカーはまだ一握りだ。アーサー・ディ・リトル・ジャパンの試算では、アメリカのテスラのEVは営業利益率が7~8%とガソリン車とほぼ同じの一方、既存メーカーのEVは赤字だ。リチウムやコバルトなど主材料の高騰により電池調達コストがネックになっている。

電池をいかに安く調達するかが競争力を左右

テスラは今年4~6月の世界販売台数が20万台を突破。EVの世界首位メーカーとして電池調達面で価格優位性があり、直売方式を取ることも収益上有利だ。

現状は電池がEVの製造原価の3~4割を占めるため、電池をいかに安く調達するかが当面の競争を左右する。

VWは2030年までに欧州で6つの電池工場を造る計画で、スウェーデンの新興電池メーカー・ノースボルトや中国の国軒高科と組む。GMやアメリカのフォードも韓国系電池メーカーと共同で巨大電池工場の建設を進める。スケールメリットでコストを下げる作戦だ。

脱炭素の「解」とされるEV化だが、自動車メーカーにとって決して平坦な道のりではない。従来のサプライチェーンの再構築やビジネスモデル自体にまでメスを入れることが求められている。生存競争に勝てる企業、淘汰される企業の選別が、今着々と進んでいる。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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