潜水艦計画で過熱する「アジアの軍拡競争」の実態 「AUKUS」が太平洋に広げる危険な波紋

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バイデン政権はアジア各国に対し、中国の軍備拡張に対抗する支援を行うと約束しており、今回のオーストラリアとの契約はまさにその典型となった。

しかし、アジア各国、中でも東南アジア各国の政府の多くは、アメリカとの「永遠のパートナーシップ」を宣言したオーストラリアのスコット・モリソン首相と同じ選択を迫られる事態は避けたいと願っている。

国境地帯で衝突したり関係修復を試みたりと、中国に対しどっちつかずの態度を見せているインドは、オーカスについて口をつぐんでいる。北朝鮮との潜在的な衝突の可能性に対応を集中し、中国とは安定的な関係を維持しておきたいと考えている韓国も、同様だ。

インドネシアの外務省は「軍拡競争が続いている状況を深く懸念している」との声明を出した。不安の声はマレーシアからも上がっている。

中国とアメリカの双方と良好な関係にある都市国家シンガポールのリー・シェンロン首相は、モリソン首相に対し「このパートナーシップが地域の平和と安定に建設的に寄与する」ことを願っていると、当たり障りのないコメントを送ったと現地紙ストレイツ・タイムズは伝えている。

中東に続く次の戦場は、ずばり北東アジア

オーストラリアが最終的に少なくとも8隻の原子力潜水艦を建造するという今回の計画は表面上、中国の軍事バランスにほとんど影響を与えないようにも見える。約360隻の艦艇を抱える中国海軍は世界最大の規模を誇る。原子力潜水艦も約12隻を保有しており、アメリカ海軍情報局によると、その数は2030年には21隻に増えるとみられる。

一方、アメリカ海軍は約300隻の艦艇を有し、うち68隻を占める潜水艦はすべて原子力潜水艦だ。仮にオーストラリアがこれまでの傾向に反し比較的速やかに配備を進められたとしても、最初の原子力潜水艦の進水は2030年代後半まで待たなければならないだろう。

ステルス性能に優れた追跡の難しい潜水艦を中国、日本、朝鮮半島の周辺海域に配備できれば、中国軍に対し強力な抑止力になりうると、元アメリカ国防総省の高官で中国との関係を担当していたドリュー・トンプソン氏は話す。

現在はシンガポール国立大学で客員上級研究員を務める同氏は「中東での戦争は終わった」と言い、こう続けた。

「私たちは今、戦争と戦争の間の戦間期にいる。次の戦争は、軍事力で肩を並べる国同士が高度な技術を駆使して極めて高い緊張関係の中で戦うものとなり、そこには十中八九、中国が関与し、ほぼ間違いなく北東アジアで起きるものとなるだろう」

(執筆:Chris Buckley記者)
(C)2021 The New York Times Company

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