潜水艦計画で過熱する「アジアの軍拡競争」の実態 「AUKUS」が太平洋に広げる危険な波紋
アメリカと強固な同盟関係にある日本と台湾は、この潜水艦導入計画を含むアメリカ、イギリス、オーストラリアの新たな安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を即座に支持した。
ほかのアジア各国は、声明または沈黙を通して、中国を刺激することへの不安を示している。東南アジア諸国の首脳の多くはもちろん、アメリカが今後も安全保障の大黒柱であってほしいと考えている、とシドニーを拠点とするローウィー研究所で東南アジアプログラムを率いるベン・ブランド氏は語る。
「しかし、アメリカやオーストラリアなどの同盟国が対抗戦略を声高に叫ぶと中国の仕返しが怖い、といった懸念も広がっている」と同氏は言う。「東南アジア各国の声が無視され、東南アジアを中心に緊張がエスカレートする悪循環に拍車がかかる展開だ」。
今回の潜水艦計画以前から、一部の国々は新たな軍艦、潜水艦、ミサイルの配備を進めていた。1つのきっかけとなっていたのが、中国の急速な軍拡と領有権をめぐる強引な主張だ。国際戦略研究所によると、中国の軍事費はアジア全体の42%を占める。
各国とも徐々に軍拡
日本の政策担当者も、同国が1970年代から守り続けてきた国内総生産(GDP)の1%という上限枠を超えて、防衛費を増加させることを公然と議論するようになった。北朝鮮対応に注力する韓国は2018年以降、防衛費を年平均で7%ずつ増加させている。
インドは、中国との緊張の高まりを受けて軍事費を徐々に引き上げてきた。
コロナ禍で経済に深手を負ったためインドの軍拡のペースは鈍る可能性があるが、同国の空軍トップは9月、今後20年で自国組み立ての軍用機を350機増やす計画だと語った。
日本は紛争時に中国の軍艦が攻撃可能となる超音速ミサイルを配備する計画を進めている。中国が領有権を主張する一方、島として自治を行う台湾は、来年度の軍事予算に168億ドルを投入する計画を提案。うち14億ドルは戦闘機を増やすのに使うとしている。