「人流」依存のコロナ分析・政策に限界がある理由 ある程度相関関係あっても全てが因果関係にない

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次のポイントは「相関は因果を意味しない」という点で、これはどんな文脈でも「人々の行動」を分析する際に非常に重要である。相関と因果の違い・因果関係を解明するための手法に関しては、経済学ほど真剣に向き合ってきた学問はないかもしれない。我々は因果推論の専門家ではないので深くは語れないが、因果関係解明の手法を教育・労働・出産・子育て等の分野の例を基に一般の人向けにわかりやすく解説した日本語の本が幾つかあるので、興味のある方は是非手に取って頂きたい<※>。

<※『「原因と結果」の経済学 データから真実を見抜く思考法』(ダイヤモンド社、中室牧子、津川友介著、『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』(光文社、山口慎太郎著)>

ジンバブエと東京の人流に強い相関関係があっても

コロナ感染の文脈で相関と因果の違いを理解してもらうために、図4では東京都での実効再生産数とザンビア共和国・ジンバブエ共和国の人流の相関を示している。相関関係は0.8と非常に高い。しかしながら、おそらくザンビア・ジンバブエの人流を抑えても東京の感染拡大抑制にはつながらないと推測する。適切な例であるかの自信はないが、ある変数と東京での感染の相関関係が高いからと言って、必ずしもその変数に影響を与えれば東京での感染に影響を与えることができるとは言えない、という一例として受け止めてほしい。

図4

東京での人流データと東京の感染でも同じことが言える。感染は人と人との接触で広がるので、「東京の人流を減らせば東京での感染は抑制できる」という因果関係にはある程度の説得力はある。しかしながら、この説得力は「論理的な正当性がある」から生まれてくる説得力であり、相関関係がある程度高いことだけからは生まれてこない説得力である。そして「論理的な正当性がある」からといって、定量的にこの因果関係が強いとは必ずしも言えない。

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