ここでの重要なポイントは、相関の強いデータでも実効再生産数の変動の約4割を説明できないという点である。具体的なイメージを持ってもらうために図2では(1)人流データから予測される実効再生産数と実現値、(2)人流データを使った新規感染者数予測値と実現値と比較している。基本的なパターンは捉えているが、毎期毎期説明できない部分も大きいことが読み取れる。2週間先の新規感染者数予測が1,000人以上実現値と乖離することもある。
従って、今後の見通しを立てたり政策分析をしたりする際には、人流データだけでは実効再生産数変動のすべては説明できないこと、またその感染者数予測値は短期の予測でも実現値と大きく乖離しうることを頭の片隅に置き、人流データに依存した分析だけを参考にして政策決定・意見形成をすることには慎重になる必要がある。
相関関係の安定性
次のポイントは、実効再生産数と相関の強いデータでもその相関関係は必ずしも安定していない、という点である。
この点を理解するために、上記した実効再生産数と相関関係の強い3つのデータを丁寧に見ていこう。図1では2020年3月から2021年9月までの相関関係を眺めたが、図3では2020年10月からスタートして「その時点における最近(過去3カ月)の相関関係がどのように推移したか」を示している。
平均して高い相関関係だが、時期によって相関は0.4位まで下がっていることが読み取れる。別の言い方をすると、いかに実効再生産数と相関関係が高いデータでも、数週間にわたってその相関関係が大きく弱まることがありうる、ということである。
このように、その相関が不安定であることも、人流データに基づいた分析のみに依存すべきではない理由である。