「時短勤務」を極力避けるべきこれだけの理由 「収入減」だけではない将来にわたる深刻影響
また、妻が時短勤務をすることによって、夫は主たる稼ぎ主の座を降りられませんから、「男は仕事、女は家庭」の役割分担は固定化される可能性が高まります。
出産前には平等に家事を担っていた夫婦であっても、一度固定化してしまうと、もとに戻すためには相当のエネルギーを要します。
当初はフルタイムに戻ろうと考えていたとしても、そのためには家庭と職場双方において、さまざまな交渉が必要になってきます。そのような労力をかけるくらいなら、さまざまな方法を駆使して、夫の仕事も妻の仕事も大事にしつつ、子育て期を乗り越えるほうが建設的ではないでしょうか。
ある大手製造企業は社内保育園を社費で作っていますが、これは社会奉仕ではありません。10年かけて育てたスタッフが家事育児で力尽きて辞めてしまえば、それは大きな損失となるからです。
社内結婚が多いその会社は、女性ばかりが育休を取ると、彼女らの職場の上司が割を食うため、イクメンを増やし、イクメン用の情報交換インフラを作っているそうです(※2)。
これは一企業内での職場間の不公平を是正する視点でのインフラ作りですが、広く企業単位で見れば、女性を多く雇用している企業の育児支援制度に、男性を多く雇用している企業がフリーライドしていることになります(※3)。
新たな時代に取り残されない
しかし、世の中は少しずつ変わっています。ある日、周りを見渡したら「自分たちだけが取り残されていた」となってしまわないよう、夫婦で経済的責任を分散させて新時代の波に乗って行くほうが得策です。
「男性だから長時間労働も厭いません」「女性だから稼ぎが少なくてもいい」といった硬直的な役割配置では、順風満帆とばかりはいかない人生を乗り切っていけません。
「男性は一家を背負っている」という悲壮感が夫を追い込み、健康を害してしまったのではもとも子もありません。そもそも家事をしないからといって、会社での出世が保証されるわけではありません。
セクハラやパワハラが蔓延する職場や、長時間労働が常態化する職場など、身体や精神の健康を損ねるような職場を回避し、自分の命を守ることも大切です。そのためにも、家庭内での稼ぎ力を1人に集中しないことがリスク管理になるのです。
家族はそれぞれが取り換えの利かない大事な人材です。夫婦共通の責任事項である家事と育児を分担し、それぞれの稼ぎ力を保ち続けるために、仕事と家庭のどちらにも負荷がかかり過ぎないようにすることが家庭運営の秘訣です。
(※2)海老原嗣生・荻野進介(2018)『名著17冊の著者との往復書簡で読み解く 人事の成り立ち─「誰もが階段を上れる社会」の希望と葛藤』白桃書房
(※3)治部れんげ(2019)「夫の会社が妻の会社の育児支援にタダ乗り─カネカショックで露呈した現実」BUSINESS INSIDER、6月11日 https://www.businessinsider.jp/post-192525
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