目先の誘惑に弱い人が意識するといい3つの視点

今の10万円より将来の10万1000円を選べる?

仕事の選び方に関しては、今いる業界が斜陽だということに気づいたら、早期に転職先を探して脱出することが、時間割引率が低い行動です。しかし、多くの人がギリギリまでい続けて、どうにも立ち行かなくなったときに初めて転職先を探す、という時間割引率が高い行動をするので出遅れるわけです。それまでに築いたキャリアや地位にしがみつき、なんとか活躍し続けようとすると、しっぺ返しが5年後、10年後に必ずやってきます。

私は、近年のさまざまな社会的な実験で、意志の力は有限でアテにならないことがわかったのは、大きな発見の一つだと思っています。時間割引率を低くするにも、自分の意志をまったく信用しないか、あるいは意志の力を使うにしても最小限にすることが重要です。

時間割引率を下げるためには、目の前の誘惑から逃れる必要がありますが、そのときいちいち意志の力を使っていると心が疲弊します。そしてたいていは途中で意志の力が途切れて、誘惑に負けてしまいます。そうならずに時間割引率を下げるには、環境を整えることがポイントです。

有名な「マシュマロ実験」の後日談

マシュマロ実験という、時間割引率が低い心の状態=自制心に関するアメリカの有名な心理実験があります。これは4歳の子どもにマシュマロを1個与えて、15分間食べるのを我慢したら、もう1個与えられる、という実験で、約200人の子どもを対象に行ったところ、3分の1の子が我慢できました。そして、その3分の1の子たちは十数年後も自制心を持続していて、周囲より優秀な成績を収めていることがわかりました。

という結果ですが、実はこの実験には後日談がありまして、対象を変えて再実験したところ、そんなきれいな結果は得られなかったのです。なぜかと言いますと、最初の実験はスタンフォード大学の付属の保育施設に通う、とても恵まれた家庭の子どもだけを対象にしていて、彼らの自制心を左右する要因は、彼ら自身の性格よりも、家庭の経済的な余裕や、親の時間や気持ちの余裕のほうが大きかったからです。

もし、マシュマロをもらえないような家庭環境で育っていたら、1個もらった段階で食べてしまうのが自然で賢明な選択になります。親がいつも約束を守らないタイプだったら、子どもは食べるのを我慢したら2個あげる、と言われても信じなくて当然です。約束を守ってもらえなかった経験から、1個もらったらすぐに食べることを選ぶのです。

つまり、時間割引率を下げたくても、環境がそれを許してくれない場合がある、ということです。環境を変えない限り、時間割引率はそう簡単に低くできないからこそ、どういう環境であれば、時間割引率が下がるか、という整備が重要なのです。

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