「台湾」への改名でジレンマに陥るバイデン政権 「一つの中国」政策をめぐり米中対立の新たな火種に発展

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台湾は国際オリンピック委員会(IOC)に「Chinese Taipei(中華台北)」の名称で参加している。表音文字の英語なら何の誤解も生まないが、「中華台北」を中国側が「中国台北」と表現すると、台湾側は「台湾は中国の一部ではない」と問題視する。

2021年7月の東京オリンピック開会式では、「チャイニーズ・タイペイ」という国立競技場のアナウンスに続き、実況放送したNHKアナウンサーが「台湾です」と紹介したことが、台湾では好意的に受け止められた。一方、中国側は「公共放送が一つの中国を損なうような報道はすべきではない」(「環球時報」)と批判。表意文字は便利なツールだが、政治的には大きな対立要因に発展することもある。

在米台湾機関の改名問題は前例がある。2020年12月、アメリカ下院議員78名が連名で、当時のポンペオ国務長官に対し「台湾代表処」に改名するよう求める書簡を送ったのだが、トランプ氏はゴーサインを出さなかった。

アメリカと台湾の高官が秘密外交も

今回はイギリスの経済紙「フィナンシャルタイムズ」が、2021年9月10日のバイデン・習近平電話会談の直後、バイデン政権が改名を検討し、大統領のゴーサインを待つばかりと報じたのが契機。同紙は、アジア政策を統括するキャンベル・インド太平洋調整官や、国務省アジア担当者が改名を支持していると伝え、改名問題はがぜんとして現実味を帯びた。

さらに同じ10日には、ワシントンDCから車で1時間半のメリーランド州アナポリスで、バイデン政権下初の米台高官会議が開かれたこともわかった。秘密会議には、台湾から総統府国家安全会議の顧立雄・秘書長に加え、吳釗燮・外交部長(外相)が外相として初参加。アメリカ側は国務省とホワイトハウス高官が出席したとされる。

台湾誌「新新聞」は、会談について「米台関係について多くの問題を話し合った。改名問題もその一つだった」と伝える。高官会議は1996年の台湾総統選をめぐる「第3次台湾海峡危機」以来、不定期に開かれてきた。トランプ政権は、アメリカ代表としてボルトン国家安全保障担当補佐官を充てる格上げをし、バイデン氏は台湾外相の初参加を許した。北京は、「次は台湾総統のアメリカ訪問を認めるのでは」という疑念を深める。

改名問題への中国側の反応は予想以上だった。先に紹介した「環球時報」社説は、もしバイデン政権が改名に応じれば「駐米大使召還は最低限の対応」とし、台湾への武力行使を法的に認める条件を規定した「反国家分裂法」(2005年施行)のレッドラインを越え「大陸側は必要な経済・軍事措置を講じる必要がある」と警告した。具体的には、台湾への経済封鎖と、空軍機の台湾本島上空飛行を挙げている。

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