「マンモス復活」ベンチャー、その驚愕の事業内容 シベリアに遺伝子編集ゾウを放つとどうなる?

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ところが2019年、同氏のもとにテキサスを拠点とする人工知能(AI)会社ハイパージャイアントの創業者ベン・ラム氏から連絡があった。マンモス復活計画の報道を見て、関心を持ったということだった。

ラム氏はチャーチ氏の研究室を訪れ、2人は意気投合した。「約1日研究室を見せてもらってジョージと多くの時間を過ごすうちに、2人でこの目標を追いかけようという情熱が湧いてきた」とラム氏。

ラム氏はチャーチ氏の研究を支えるため、コロッサルの立ち上げ準備に入った。DNAの編集から最終的にハイソリ氏が「機能本位のマンモス」と呼んでいるものを野に放つまで、全体の取り組みを支援する会社だ。

創業資金はさまざまな投資家から集められた。そこには、脱炭素化を支援する未公開株投資会社クライメートキャピタル、フェイスブックを相手取った法廷闘争やビットコインへの投資で知られる双子のウィンクルヴォス兄弟などが名を連ねている。

クローンマンモスの悲しみ

研究者チームはこれから、マンモスに似るようゲノム編集したゾウの胚の作成を試みる。それには、ゾウの卵子からDNAを取り除き、マンモスに似せたDNAと置き換えなくてはならない。

しかし、ゾウから卵子を取り出すことに成功した人はまだいない。この方法がうまくいかなかった場合に備えて、ハイソリ氏らの研究グループはゾウの一般的な組織を幹細胞化する研究も進める。幹細胞を実験室内で胚に分化させることができるかもしれないからだ。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの哲学者ヘザー・ブッシュマン氏は、マンモスの復活がツンドラの保護につながるメリットがあったとしても、科学者の手で人工的につくられたマンモスが味わうことになる苦痛と天秤にかける必要があると話す。

「母と子が極めて強い絆で結ばれ、それが長期にわたって続くのがゾウだ。仮にこのマンモスが少しでもゾウに似ているのだとすれば、母と子の絆がとても強い動物を母なしでつくり出すことになる」という。「マンモスの子どもが1頭か2頭できたとして、適切に世話することは本当に可能なのか」。

(執筆:Carl Zimmer記者)
(C)2021 The New York Times News Services

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