ウクライナ発景気減速懸念、円金利にも波及 焦点:金融緩和圧力を意識した相場展開
[東京 15日 ロイター] - 10年最長期国債利回り(長期金利)
昨夏はバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の緩和長期化発言をきっかけに低下に転じた円金利。今年も夏場の金利低下という構図が見られている。
米緩和縮小(テーパリング)後の早期利上げ観測を背景にした米金利上昇懸念は、見事に打ち砕かれた──。世界三極の市場である日本・米国・ドイツの国債利回りがそろって低下基調を強める光景に、ある国内金融機関の債券関係者がこう話す。
金利上昇局面を狙って買いを入れるはずだった市場参加者にとって「押し目待ちに押し目なし」の相場展開にいら立ちを隠せない。
14日の海外市場では、独10年国債利回り
市場では、9月決算期末を控え、機関投資家による利益確定売りへの警戒感もくすぶるが、多くの市場参加者が押し目局面を待っている状況の中で「ポジションをショート(売り持ち)に振っても、カバーできる保証はない」(同)として、市場心理は強気に傾いている。
東海東京証券・チーフ債券ストラテジストの佐野一彦氏は「日銀買い入れによる利回りの自然落下が続き、長期金利は9月末に0.45%付近まで低下するのではないか。下期には、急激な円急反発で日銀の追加緩和期待を高めるような局面になれば、史上最低(0.315%)を割り込み、0.25%まで低下する場面もありうる」との見通しを示している。
金利低下に拍車をかけたのは、世界経済の楽観シナリオが大きく後退したことだ。ウクライナの問題解決に時間がかかれば、ロシアとつながりが強い欧州経済へのダメージが大きくなり、「世界を回り回って、影響が少ないとみられる米国や日本にも、ボディブローのように効いてくる」(三井住友アセットマネジメント・シニアファンドマネージャーの深代潤氏)との見方が浮上している。
8月に入って欧州で発表されたマクロ指標は、さえない内容が相次いだ。14日にはユーロ圏第2・四半期域内総生産(GDP)速報値が、前期比横ばいとゼロ成長。域内最大の経済国であるドイツは前期比0.2%減とマイナス成長に沈んだ。
また、米国では7月小売売上高で消費の勢いが失速。日本でも4─6月期実質国内総生産(GDP)が年率換算で6.8%のマイナス成長になるなど、世界的にマクロのハードデータに下方バイアスが掛っている。「グローバルリセッション入りの可能性も出てきた」(東海東京証券の佐野氏)との声もささやかれる。
債券市場にとって、大敵はインフレ圧力の高まりだが「世界を見渡してもその兆候が見られない。株高による資産価格効果などによってインフレ圧力を高めるには、日本や欧州が再び追加緩和に踏み切らなければ、難しいのではないか」(邦銀)として、政策対応を求める声も出始めた。
昨夏の円金利は、当時のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長による緩和長期化発言をきっかけに低下に転じた。今年も海外要因がきっかけとなり、投資家の買いを促す構図は同じだ。
グローバルなディスインフレ懸念で金利が上がりにくい経済構造の中、「待ちすぎによる期間収益の逸失を避けたいという投資家の思惑が働いているのではないか」(国内証券)という。
(星裕康 編集:田巻一彦)
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